情報機器リユース・リサイクル協会(RITEA):

データ消去ソフトの認定では厳格な審査を実施、その方法とは

前編に引き続き、携帯電話・スマートフォンのリサイクルやリユースの状況について、一般社団法人情報機器リユース・リサイクル協会(RITEA)専務理事 小澤 昇氏にお話を伺った模様をお伝えする。

後編では、情報機器をリユースやリサイクルに出す際に重要になってくる「データ消去」や、適正な処理を行う事業者の認定制度などについて取り上げたい。

スマートフォンデータ消去ソフトの認定基準は
「データ復旧事業者でも復元できない」こと
――昨年4月より、スマートフォンデータ消去ソフトウェアの認定制度を開始されましたが、その狙いはどのあたりにあるのでしょうか。
小澤氏:
携帯電話やスマートフォンのリユース・リサイクルをさらに普及させるにあたり、データの消去は欠かせないと考えています。特にスマートフォンはパソコンに近い存在であり、電話帳データにとどまらず仕事上のデータも含め、情報の塊といっても過言ではないでしょう。

機器にはいわゆる「オールリセット」機能は搭載されていますが、この操作だけでは完全にデータが消去されるわけではないため、リユース・リサイクルにあたりデータ消去ソフトを使った消去作業は必須といえます。

とはいうものの、データ消去ソフトウェアは数多く販売されており、安心して使えるソフトかどうかを各事業者が見分けるのは困難でした。

そこで、スマートフォンのデータ消去ソフトウェアに関して認定を行うことを決めました。もともとRITEAでは、パソコンに内蔵しているハードディスクドライブ(HDD)のデータ消去についての評価認定を2008年2月から行ってきた実績がありましたので、そのノウハウを活かしています。

――具体的にどのように認定を行っているのでしょうか。
小澤氏:
HDDデータ消去ソフトの認定では、RITEAが策定を行った調査項目について、評価用パソコンを数多く保有している国内大手パソコンメーカと、別の大手パソコンメーカの関係会社に検査を依頼し、両社の検査で合格が出たソフトに対してRITEAが評価・認定を行う仕組みを取っています。

スマートフォンデータ消去ソフトの認定では、海外メーカの端末も多いことからメーカへ依頼するかたちではなく、大手データ復旧事業者にデータ復旧を試みてもらい、復旧できないことが明らかになったソフトに対して認定を行っています。

実際の調査項目については、データが消去されているか、スマートフォンのOSに依存せず消去できるか、消去後に消去証明書ないしログデータが記録できるか、など5項目から構成されています。具体的な調査項目は当協会のウェブサイトでも公開しています。

ちなみに、データ復旧事業者側では、内蔵メモリを取り出し、メモリリーダにそのメモリを載せ替えた上でデータが復活できないかをチェックするほど厳密な検査を行ってもらっています。

――認定ソフトは何種類ありますか。
小澤氏:
現在は株式会社ウルトラエックス「Mobile Pliers v2.X」とリプロ電子株式会社「Re-secure 3.0.x」が認定資格を取得しています。両ソフトとも、Androidスマートフォン用とiPhone用のいずれも認定を受けています。

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事業者および人材に対する認定制度を設け
市場の健全な成長に寄与
――ソフトの認定とは別に、事業者の認定も行われていると聞きます。
小澤氏:
はい。当協会では、情報機器のリユースとリサイクルに関して適正な業務を行っている事業者を認定する制度も運用しています。

リユース事業者に関しては2008年6月から「RITEA認定情報機器リユース取扱事業者」制度を、リサイクル(再資源化)事業者に関しては2009年6月より「RITEA認定情報機器リサイクル(再資源化)取扱事業者」制度を開始しました。

認定は事業者単位ではなく、事業場単位で行っています。全国に複数の拠点を有する事業者の場合、それぞれの事業場へ現地調査に赴いて審査を行っています。

現在では、一部地方自治体が保有物件の売却を行う際、当協会の認定資格保有者を入札条件にするところもあり、認定制度が定着しつつあると実感しています。

――現地での審査はどのような内容ですか。
小澤氏:
認定資格の取得認定要件や認定手続を取りまとめた取扱要領は公開していますが、具体的なチェックリストは非公開としています。

以前はチェックリストも公開していたのですが、それをみて「RITEA準拠」と銘打つ事業者が出てきたため、非公開としました。我々としては、あくまで第三者が実際に現地調査を行うことに意味があると考えています。また、認定事業場を定期的に再訪することで基準が維持されていることを確認する仕組みも取り入れています。

――事業場とソフトウェアの認定が行われているのですね。
小澤氏:
実はもう1つ、人材の認定を行うべく「情報機器リユース・リサイクル取扱者検定」を2012年12月から開始しました。

情報機器のリユースやリサイクルを行う場合に知っておくべき法令や実務の内容、データ消去の必要性とその概要などを問う内容となっています。

出題範囲は、当協会が編纂した「情報機器3R&データ消去ガイドブック」から出題しています。既存の出版物では全体をカバーするものがなかったため、関係省庁の協力も仰ぎつつガイドブックとしてまとめることができました。検定開始からまもなく1年がたちますが、現在では、合計で約500名の方が受験され、約430名の方が合格されています。

法律等が改訂される可能性を考慮し、資格には2年間の有効期間を定めています。

事業場、データ消去ソフト、人材に対する認定制度を設けることが、情報機器のリユース・リサイクル市場の健全な成長の一助となればと考えています。

――本日はお忙しいところありがとうございました。
※本記事の詳細は「携帯・スマートフォンの中古端末市場動向」をあわせてご参照ください。
インタビュー:情報機器リユース・リサイクル協会(RITEA)
  1. 携帯電話の再資源化率は60%以上、金・銀・レアメタルなども回収
  2. データ消去ソフトの認定では厳格な審査を実施、その方法とは