通話強化に踏み切るMVNO「NifMo」にインタビュー:

通話完全定額に加え所有端末保証など差別化サービスを積極投入する背景

携帯キャリアに比べ割安なデータ通信料金をベースにシェアを伸ばしつつあるMVNOだが、音声通話の料金体系は「30秒20円」の従量課金がその中心だった。しかしここにきて、データ通信同様、音声通話でも特徴的な料金プラン・サービスを打ち出す事業者も増えてきた。

そこで本コーナーでは不定期連載として、データ通信だけでなく音声通話の強化に踏み切ったMVNOの取り組みについて取り上げていく。

今回は、音声通話の完全定額かけ放題サービス「NifMo でんわ」を昨年10月から開始した、ニフティ株式会社 ネットワークサービス事業部 ネットワークサービス部 課長の苗村亮一氏、ならびに同部の佐々木雅彦氏にお話を伺った。

2015年10月から音声通話「完全定額」サービスを開始
――「NifMo」のオプションとして、昨年10月から音声通話の完全定額サービス「NifMo でんわ」を開始されています。まずは提供の狙いを教えて下さい。
ニフティ株式会社 ネットワークサービス事業部 ネットワークサービス部 課長の苗村亮一氏(左)と、同部の佐々木雅彦氏(右)
佐々木氏:
音声通話料金に対する不安を取り除きたい、という思いからサービスの提供に踏み切りました。

「MVNOはデータ通信を安くできるが、逆に通話料金が高くなる」とのイメージを持たれる方がかなりいらっしゃいます。そこで、通話料金に対する割高感を解決できればブレークスルーが可能ではないかと考え、定額制の導入を決めました。

専用アプリから発信した場合の通話が定額となります。昨年10月のサービス開始時はAndroid版のみでしたが、今年2月にはiOS版アプリの提供も開始しました。

――完全通話定額は、どのような方法で実現されているのですか。
佐々木氏:
海外のネットワークを経由させています。電話をかける際、IP電話によるパケット交換で海外ネットワークに接続します。その後、海外から回線交換方式で相手先へつなげています。米国のGENBAND社のプラットフォーム「fring」を採用しました。
――IP電話ということは、050番号での発着信となるのでしょうか。
佐々木氏:
050番号は発行せず、お客様のSIMの電話番号をご利用いただきます。 発信時、海外ネットワークへ接続する際にはIP電話の仕組みを用いていますが、海外から相手先には通常の回線交換方式で着信します。

一方、着信時にはお客様のSIMの電話番号にかかってくるので、「NifMo でんわ」の仕組みは用いず、通常の音声回線でつながります。ですので、お客様はIP電話であることを意識せずにご利用いただけます。

純粋なIP電話の場合、音声通話に対応していないデータ通信専用SIMでも利用可能ですが、「NifMo でんわ」は音声対応SIMでのみ利用可能です。

――海外を経由させる、とのことですが、一般的な電話と何か違いはありませんか。
佐々木氏:
まず、IP電話ではインターネット通信を利用しますので、回線状況によっては通話品質が低下する場合があります。

また、相手先への電話番号通知の挙動が異なります。我々のシステムも、一般的な電話と同じく通話相手に対して発信者の携帯電話番号通知を試みますが、通話先の電話会社によっては「通知不可能」または「非通知」と表示されたり、日本の国番号「+81」が先頭に追加されることがあります。

――番号通知されない場合、利用者はどうにもならないのでしょうか。
佐々木氏:
「NifMo でんわ」で電話をかけたことをSMSで伝えるオプションを提供しています。「電話をかける」ことをSMSで事前に伝えておけば、仮に非通知で電話がかかってきても誰からの電話か類推することができます。SMSは、電話をかける前と後の希望するタイミングで送信できます。また、全ての通話で自動的に送ることも、送信の有無を都度選択することもできます。利用者が希望するタイミングを選択できます。
――「NifMo でんわ」を開始したことで、顧客層に変化はありましたか。
佐々木氏:
「NifMo でんわ」は携帯電話会社から乗り換えてもらうことを1つの狙いとしてきました。利用者に占めるMNPの割合は、音声通話対応SIM利用者全体より、「NifMo でんわ」利用者の方が高くなっており、狙い通りに推移しています。
――「NifMo でんわ」は、国内通話定額に加え、海外通話定額もラインナップにある点がユニークですね。
佐々木氏:
さきほどお話した通り、米国のプラットフォームを使ってサービスを行っています。米国から見たら日本も海外となりますから、日本への通話と他の国への通話でハードルに大きな違いはありません。これが検討をはじめたきっかけです。

海外にいる友人、単身赴任中の家族など、国内から海外への通話ニーズもあると思い、提供することにしました。海外通話定額を利用される方は全体からすればそれほどボリュームはありませんが、一定数の方には利用されており、特定のニーズにはまっていると考えています。

――利用者にとってはありがたい完全かけ放題ですが、サービス提供側にとってはどれだけ通話されるかが分からない部分がリスクになりませんか。
佐々木氏:
事業者の視点で言うと、お客様が電話をかければかけるほどコストが発生してしまうのは事実です。ただ、料金体系とサービス内容とのバランスを取ってうまく提供できています。
「タダスマホ」「訪問設定サポート」などオプションで特徴打ち出す
――音声定額も「NifMo」のオプションの1つですが、他にも様々なオプションがあります。
苗村氏:
我々が「NifMo」の提供を始めたのは2014年11月と、ISP系ではかなり後発でした。データ通信の料金ではそれほど差が出せない状況ですから、他社にはないサービスを提供し違いを打ち出すことを強く意識してきました。
――ネットショッピングやアプリダウンロードの利用状況に応じて月額料金が割り引かれる「NifMo バリュープログラム」は開始当初から実装されていましたね。
苗村氏:
我々はサービス開始にあたり「NifMo バリュープログラム」の仕組みを使って、お客様に無料でスマホを使って頂こうと考えていました。実際、検討段階ではこのプロジェクトを「タダスマホ」と呼んでいたくらいです。最終的にこの名前は不採用となりましたが、その目標である「タダ」は、実際の還元額水準からも実現できたと自負しています。 (執筆者注: 2015年7月度の割引還元実績は一人あたり平均1,041円。900円/月の3GBデータ通信プランであれば、実質タダで利用できる計算になる。)
――「NifMo バリュープログラム」でよく利用されている人気のものを教えて下さい。
苗村氏:
使い始めの方にはアプリのダウンロードがよく利用されています。無料アプリをダウンロードするだけという手軽さと、割引還元の成果がすぐに反映される点が分かりやすいのだと思います。使いこなす中で、提携オンラインショップでの買い物や飲食店モニター協力による割引還元も利用いただく流れになっています。

「NifMo バリュープログラム」は我々にとって最大の差別化要因と認識しているので、今後も還元できるアイテムを追加していきたいと考えています。

――端末設定や操作説明を受けられる訪問レクチャーについて伺います。利用した際に都度請求されることが多いと思いますが、御社では月額メニューで提供されていますね。
佐々木氏:
お客様からすれば、通信費用単体ではなく端末代金やオプションも含めた「トータルで月々いくらかかるか」が重要だと思います。訪問レクチャーだけ月額利用料とは別枠でワンショットの料金体系を入れてしまうのは違和感があると考え、月額料金体系を採用しました。なお、再訪問レクチャーについては別途料金をいただいています。
――どのような方が訪問レクチャーを利用されていますか。
佐々木氏:
初めてスマートフォンを手にされる方の利用が多いですね。そういった方の中には、例えばSIMカードが何かご存じでない方もいらっしゃいます。SIMカードを挿すのは通常初期設定時のみですので、サポートでそこを肩代わりしています。

携帯キャリアで購入される場合はキャリアショップで手取り足取りサポートしていただける場合もありますが、弊社には現時点で「NifMoショップ」のようなものはありませんので、サポートの果たす役割は大きいと思います。

端末保証は「新品」だけでなく「手持ちの端末」もカバー、その背景は
――端末保証は「NifMo あんしん保証」と「NifMo あんしん保証 for SIMフリー」の2種類あるようですが、どのような違いがありますか。
苗村氏:
「NifMo あんしん保証」は、弊社が販売するスマートフォンの購入時にお申込いただけるオプションで、購入したスマートフォンが故障・破損した際などに交換機をお届けするものです。配送先の指定ができますので、例えば勤務先や宿泊先で受け取ることも可能です。

一方「NifMo あんしん保証 for SIMフリー」は、「NifMo」のSIMカード契約と同時にお申込いただくオプションで、SIMカードを挿して利用していた端末が故障・破損した際に、修理または交換費用から4万円を上限に代金を差し引くものです。「NifMo あんしん保証」と異なり、今お持ちのスマートフォンやタブレットのトラブルに対応できます。

――ということは、「NifMo あんしん保証 for SIMフリー」では中古端末も保証の対象になるのですか。
苗村氏:
ええ。保証の対象はAndroidまたはiOS搭載のスマートフォンとタブレット端末で、メーカーが機器を発売してから36ヶ月間としています。保証オプションの名称にはSIMフリーを用いていますが、中古端末であっても、通信キャリアが発売した端末であっても「NifMo」の通信サービスを利用していれば保証の対象となります。
――対象端末の門戸を広げたのは相当思い切った施策ですね。
苗村氏:
SIMフリー端末は種類も非常に豊富になってきました。一方、通信キャリアの端末もSIMロック解除が義務付けられMVNOへの乗り換えが容易になりました。中古端末を含め端末の選択肢が急拡大する中で、我々の通信サービスを利用されている方に対しては、新品端末を購入された方もそうでない方も、保証サービスをしっかり手当てすべきだろう、との思いから導入に踏み切りました。
オプションの充実で「NifMo」が選ばれる世界を目指す
――音声通話かけ放題や端末保証など、オプションが非常に充実していますが、いずれも提供は「NifMo」の利用者に限定されています。
苗村氏:
オプション単体で見れば、幅広く顧客を集めた方が利用者が多くなると思います。ただ、今はMVNOサービスの差別化要素と位置付けています。いずれも「NifMo」のオプションとして打ち出し、サービスの充実で「NifMo」を選んでもらえる世界を作っていきたいと考えています。
――ありがとうございました。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて6月17日に公開された記事となります。
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