Research Note:

携帯キャリアの新たな収益モデルとしても注目集める電子書籍サービス

 PM:あるMVNOキャリアとの定例ミーティングにて。

 スマートフォンや「iPad」などタブレット端末の普及とともに、2010年度は電子書籍サービス元年となりそうだ。

 「iPhone」「iPad」を擁するソフトバンクが、6月より30以上の雑誌や新聞を定額で読むことができるコンテンツ配信サービス「ビューン」を開始したが、その後1ヵ月遅れでKDDIがソニー、凸版印刷、朝日新聞社らと4社で、更に1ヵ月遅れでドコモが大日本印刷とそれぞれ電子書籍配信事業に関する事業企画会社を立ち上げると発表した。

 ドコモはXperiaなどのスマートフォン向け電子書籍配信サービスの提供に向けて、10月下旬~12月下旬にかけてトライアルサービスを開始する。コンテンツは、雑誌や書籍、コミック、写真集など約50タイトルが用意され、いずれもトライアル期間中は無料で提供される。またKDDIは、12月にも電子書店を開設する計画だ。

 両社の電子書籍サービスで、ポイントとなるのが大日本印刷と凸版印刷という大手印刷会社2社の存在だろう。これらは電子書籍事業の環境整備について協調していくことで合意しており、2010年7月には両社を発起人とする「電子出版制作・流通協議会」が設立されている。

 同協議会では、様々な端末に対応可能な「中間フォーマット」の標準化などを行う予定となっており、これによりドコモとKDDI向けにコンテンツ開発の面でやりやすくなると見られている。

 一方、MVNOキャリアの担当者は、電子書籍を巡る動きのなかで、携帯キャリアの収益モデルに注目しているとする。

 同サービスでは、先行するアップルがiTunesの課金システムを利用する際に、売上金額の30%を手数料として得ているとされるが、これに対してドコモサイドでは、「少し高いのでは」としている。

 同社では、「利用者に通信料金を意識させない課金モデルはユーザーにとっての利便性を考えると非常に大事な点。解決すべきことが多いが重要事項として検討している」とコメント、従来型の基本料+通信料金という収益モデルを適用しない可能性もあるとしている。

 また、KDDIサイドは、書籍代は月々の通信料金と一緒に請求。専用端末の通信機能はデータ取り込みの際にしか使わないため、通信料金には数百円程度の定額制を導入する公算が大きいとしている。KDDIは利用者からの通信料収入に加え、出版社からも手数料を得るとされる。 

 おそらく、収益モデルについては、成功を占うキモになるところもでもあり、ギリギリまで検討が行われることになるだろう。MVNOキャリアの担当者としても仮に新たな収益モデルが導入されるということになれば、収益モデルがネックとなり普及が進みにくかった分野が花開くきっかけにもなり、その影響は決して小さくないとしている。その意味でも中身が気になっているようだ。