Column:

世界が注目するドコモのLTEサービスのアプリケーション力(=突破力)

 ドコモが次世代モバイルネットワークのLTE(Long Term Evolution)「Xi(クロッシィ)」を2010年12月24日より開始をしたが、12月の加入者数は1,200件とスモールスタートとなった。しかし、2011年度末には100万契約、2014年度では1,500万と2011年以降に急速な加入者獲得を見込んでおり、そのことはFOMAがサービス開始の翌年度が33万しかなかったことからもアグレッシブルさが伝わってくる。

 もっともコストがかかる基地局設備については、既にある3Gの鉄塔、アンテナなどの基地局部材を共用化することで低減化を図り、実にFOMA立ち上げ時の10分の1前後となっている。

 このことからも、携帯各社の次世代モバイルネットワークの動きは、工事会社や部材メーカにとっては、これまでの3Gの時のようなウマミが少ないというのが大きな特徴だ。

 LTEが次世代モバイルネットワークのメインストリームになるという点については、このブログでたびたび指摘しているので詳細は割愛するが、世界最初のLTEサービスを提供したのは北欧のオペレーターであるTeliaSoneraである。

 本拠地のスウェーデン・ストックホルム、ノルウェー・オスロの2都市でスタートしたものの、サービス開始後5ヵ月の時点(2010年5月)で契約者数は1,000名程度しかなかった。理由は単純で、端末がLTE専用で3Gや2Gは搭載されていなかったのだ。その後、7月にロシアのMTS、9月に米国MetroPCS、11月に香港のCSLなどがそれぞれスタートさせている。

 LTEではFOMAでこだわった世界初ではなく、世界のトップグループとしてサービスを開始するといった言葉通り、12月ドコモは米国トップのモバイルキャリアであるVerizon Wirelssと時同じく(Verizon Wirelssは12月5日開始)してローチンしたのである。

 ドコモでは「高速」「大容量」「低遅延」という特徴を持つLTEのアプリケーションの1つとして「同時通訳サービス」や「AR(Augmented Reality=拡張現実)」などを挙げるものの、スマートフォンのLTE搭載が早くても2011年後半という予測に立てば、こうした用途は中長期的なポジションに位置づけられるのではないだろう。

 むしろ、ソニー・コンピュータエンタテインメントのPSP後継機や日産自動車の電気自動車「リーフ」への通信回線提供など、通信モジュールへの広がりの方が、SIMロック解除を予定しているドコモにとっては、素の強靭なインフラ力で勝負できる重点市場となるだろう。

 強気なLTE加入者計画の背景に『人対人』だけでない『M(Machine)対M(Machine)』市場拡大が含まれていると見るのが妥当で、そうした技術(突破力)にアプリケーション不足(=ARPU低下)で苦しむ世界の携帯キャリアが熱い視線を注いでいる。