強者間の『同質化』から『差別化』の戦いへと移行しつつある携帯市場

1.KDDIによるWiMAXスマホ&テザリング

 市場の成熟化は、弱者の撤退と強者同士の同質化の戦いが本格化するが、次のステージは『強者間の差別化の戦い』になるのかも知れない。

 昨日、KDDIはモバイルWiMAXに対応したスマートフォンの「htc EVO WiMAX ISW11HT」を4月上旬より発売することを明らかにした。

 携帯とモバイルWiMAXがハイブリッド化され使えるようっており、料金は5,985円/月(525円/月の+WiMAX利用料は8月までは無料)。更には「htc EVO WiMAX ISW11HT」をポータブルルーターとして利用し、ほかの通信機器からネット接続できる テザリングの『解禁』にも踏み切ったことは、個人的には前回のスカイプ以上に市場へのインパクトは大きいのはないかと推察する。

 テザリングは、利用者にとっては、1つの機器で複数の端末を接続できるとあって利便性の高いサービスだが、国内ではこれまで通信トラフィックへの影響を懸念し、特に大手は二の足を踏んでいたサービスだ。

 弊社では、昨年の時点で2011年の携帯サービスの注目サービスとして、テザリングを取り上げていた。

 KDDIは2011年度の端末戦略に関して、全体の半数以上をスマートフォンとして発表する予定で、国内向けのサービスに対応したWiMAX対応スマートフォンについても今後は検討していくとしている。

2.通信技術の差別化により疑問視されるSIM解除の効果

 堅牢な3Gネットワークを擁するドコモに対抗するカタチで、ソフトバンクによる「TD-LTE」、そして今回のKDDIによる「モバイルWiMAX」一体化の動きは、今後の各社の戦いが「差別化」という流れのなかで行われるのではないかと予感させる。

 これまで携帯各社は、方式やバージョンの違いこそあれ、同じ携帯電話という通信技術の上のレイヤーで差別化を一生懸命やってきたのだ。つまり、通信技術というレイヤーに限れば、同質だった。

 しかし、これからは違う。それぞれが生きていく土俵を自らでつくり、そこで戦っていこうとしているように見える。

 そして、そのことはある意味、市場活性化という大儀のために半ば強制的に総務省が推し進めてきたSIM解除が、各社が競争戦略の観点から独自の通信技術を取り入れていくなかで果たして機能するのかという疑問を持ってしまう。

 異なる通信技術を採用している状況下で、携帯キャリア間で問題なくSIMフリーが機能するには、それぞれの技術に対応するための莫大なコストがかかってしまうだろう。

 MNPしかり、周波数の割り当てもそうだが、どうも官主導には色々問題があるように思えてしまうのは私だけだろうか。 

 
Reserch Note:SIM解除がもたらす新たな競争サービス (2010年11月30日)
https://www.mca-mbiz.jp/news/2010/11/sim.html