Column:

キャリア各社のWi-Fi展開と懸念点

現在、モバイルキャリアによるWi-Fi基地局の拡充が進んでいます。キャリア各社が積極的なWi-Fi基地局展開を進めている背景にはトラフィックの急増が考えられます。キャリアがスマートフォンの販売を推進したことにより、スマートフォンが急激に普及しました。これらスマートフォンのトラフィックがキャリア各社の携帯電話ネットワークを圧迫しています。

NTTドコモはトラフィック分散に、電波利用効率の高いLTEサービス「Xi」を前面に押し出しています。しかし、KDDI(au)とソフトバンクモバイルはWi-Fiオフロードを積極化させています。両社もいずれはLTEサービスを開始させることになりますが、現在はWi-Fiでオフロードを図っていく方針のようです。

しかし、KDDI(au)とソフトバンクモバイルのWi-Fi展開には違いがみられます。自らWi-Fi基地局を設置するとともに提携も強化するKDDI(au)に、提携を中心にWi-Fi展開を図るソフトバンクモバイルです。こうした中、2社に比べてWi-Fi展開に後れを取っているNTTドコモは、どういった展開を図るのでしょうか。

おそらくNTTドコモもソフトバンクモバイルと同様に提携をメインに押し出すものとみられます。NTTドコモはNTTグループの中核企業であり、グループのWi-Fi基地局を有効利用することで早期的なWi-Fi展開を図っていくことでしょう。NTTグループにはNTT東日本やNTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTブロードバンドプラットフォームといった国内でも有数のWi-Fiキャリアがあります。これら提携することにより、2012年度上期までに30,000局、将来的に10万局へと拡大させていく計画とみられます。

ただ、Wi-Fi展開には気になる点があります。すでに都心ではさまざまな公衆Wi-Fiサービスが提供されています。そのため新たにWi-Fi基地局を設置するにはWi-Fi電波の干渉回避や出力調整などが重要となります。

こうした点を怠ってしまうと、有用な固定ネットワークが有効利用できないばかりでなく、ユーザにもWi-Fiに対する不信感を与えることになりそうです。その結果、ユーザにWi-Fiは使えないとの印象を与え、携帯電話ネットワークの利用にとどまってしまうということにもなりかねません。ぜひ、キャリア各社には、こうした点に注意を払ってWi-Fi展開を図って欲しいものです。

キャリアにおけるWi-Fiオフロードのメリット・デメリット
メリット :自社ネットワークの負担軽減
メリット :基地局設置よりも安価
デメリット:ユーザがWi-Fi網に移行すると、トラフィックコントロール不可

ユーザにおけるWi-Fi利用のメリット・デメリット
メリット :3Gサービスよりも高速
デメリット:エリアが狭い
デメリット:利用に手間がかかる(Wi-Fiに簡易接続可能なソフトの提供で解消)

関連資料
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携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測
~基地局市場をキャリア・メーカー・エンジニアリング会社等多角的な視点からトータルに分析~