『iPhone』戦国時代の競争構図(1):

ドコモ参戦につき

1.NTTドコモ×iPhone
 日本時間9月11日午前2時に開催されたアップルの発表会で、NTTドコモのロゴが映し出され、同社が初めてiPhoneを扱うことが全世界に配信された。

 SBM(ソフトバンクモバイル)が2008年にiPhoneを発売して以来、NTTドコモから他社へのMNP(Mobile Number Portability)によるポートアウトは累計で350万回線以上(ドコモの契約全体の5%以上)となった。

 特に2012年月の「iPhone5」発売後はMNPによる顧客の転出超過数ペースが以前の倍近い月15万件前後に拡大。2012年度の国内の携帯累積シェアは42%と、10年前を14ポイントも下回る水準まで落ちている。
 関係者のなかには、「この際、一度落ちるところまで行った方がいい」といった意地悪な意見が聞かれる一方で、その失速ペースは尋常ではない。

 夏商戦ではiPhone対抗策として、販売促進費をソニーと韓国サムスン電子のスマホ2端末に集中投入する「ツートップ戦略」を打ち出したものの、状況は変わっていない。

 では、iPhoneをドコモが扱うと、契約者が流出するのを止血できるのだろうか。事はそんな単純ではないだろう。

 何故なら競合するKDDIとSBMは、ドコモがiPhoneを扱うことを想定して準備を進めてきたわけだし、販売ノウハウの面でも一日の長がある。そして、少なくとも現時点でアップルから満足できるレベルで端末量を仕入れられてるとも思えない。

 しかし、今後も扱わないとするリスクと比較すれば、その下げ幅は時間が経過すれば効果が出てくるのではないだろうか。例えば、2013年9月にカンター・ジャパンが発表した調査では、『ドコモ契約者がキャリアを乗り換えた際に購入した機種は、66%がiPhone』だっとする結果を発表している。

2.ライバルではなく、iPhoneに敗れてきた
 世界のスマートフォン市場を眺めると、そもそも日本はアップルの母国である米国と並んでiPhoneのブランド意識が非常に高い。それは、地位別のモバイルOSの普及状況からも読み取ることができる。

 弊社では、定期的にモバイルOSのアップデート集計を行っているが、世界的なAndroid優位の状況とは異なり、国内市場では両者(iOS vs Android)の勢力は拮抗している。

 今回、ドコモがiPhoneを取り扱うことで、同OSの勢力は更に上昇する可能性が高い。ドコモの13年度スマホ販売目標は1,600万台としてるが、仮にiPhoneの構成比が3割で両社が合意したとすると、ドコモの最低限の販売ノルマは480万台となり、それが新規で上積みされることになる。

 2013年9月には、インプレスビジネスメディアのシンクタンク部門であるインターネットメディア総合研究所が「スマートフォンユーザー満足度調査2013」の結果を発表したが、そのなかで現在主に利用しているスマートフォンの総合満足度は、SBMが54.1%でトップとなり、以下、auが46.9%、ドコモが43.8%という順になったとしている。

 SBMがトップで、ドコモの満足度が最も低くなっていることに違和感を覚える方もいるかも知れないが、その理由は単純明快、iPhone取り扱い有無の差ということに尽きるとしている。

 同調査の項目別の評価では、「本体」「月々の料金」「独自サービス」はSBMが1位、「ネットワーク」「サポート・アフターケア」はドコモが1位となった。ただし、「ネットワーク」についてはLTEに限定した場合は、SBMが1位であった。一方、3キャリア平均で59.4%と高い満足度の「本体」に対し、「ネットワーク」「サポート・アフターケア」「独自サービス」の満足度は3割程度、「月々の料金」は16.9%と低い。

 つまり、iPhone比率が最も高いSBMが満足度も最も高いというだけで、この点からもドコモはライバルに負けたというよりも、iPhoneにやられて来たということが言える。