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レッドオーシャン化が進む法人携帯市場

最近、現場をまわっていると法人向けの携帯電話市場の競争が激化しているという声を聞く。テレビCMなどのマスメディアを積極的に使って訴求するマス市場と異なり、あまり動向が分かりにくいのが法人市場の特徴でもある。今回は、そんな法人向けの携帯電話市場にスポットを照らし、トレンドやマス市場との違い、そして"今"について簡単にお伝えしていきたい。

1. 法人市場のトレンド
携帯電話の成熟化が叫ばれて久しいが、そんななか有望市場として期待を集めているのが法人市場である。

もともと法人市場は、個人市場の急激な伸びに隠れて日陰的な存在だったが、携帯各社は1990年後半より専門部隊を立ち上げ、純増回線への寄与を目指してきた。

法人市場において携帯会社は従業員数によって企業規模に応じて3つや4つの層に分類し、それぞれに営業や商品、プローモーション展開を図っている。

当初、法人市場の主戦場は従業員1000名以上の層だったが、ソフトバンクがボーダフォンを買収した2006年あたりから、次第に下の層へ戦いの舞台が移り、ここ3年くらいは数十名程度の従業員規模まで降りてきている。

2. 相対契約という「武器」の功罪

営業の現場で武器となるのが、携帯会社と法人顧客の間で自由に料金を決めることができる相対契約である。同制度は、改正電気通信事業法の施行により2004年4月から導入されたものであり、それまでは契約約款に定められた提供条件と料金でのサービス提供が義務付けられていた。

つまり、法人契約においては、個人向けに提供されている料金プラン(=タリフ)とは全く異なる料金の適用が可能で、理論的には通信料金ゼロ円ということもできるということになる。

これまで携帯会社は、競合状況や将来の収益性などを考慮して、お互いそれなりに節度ある相対契約の提案を行ってきた。しかし、ここへきてそうした秩序が崩壊し、相対を切るケースが増えてきているという。

iPhoneや通信料金で、さらには通信ネットワークで携帯会社の差別化が困難になっていることが一層の相対競争を誘発し、かつて肥沃(=高収益)だった法人市場の焦土化(=低収益)を加速させているように見える。

競争は、まだしばらくは混沌としていきそうだ。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて11月28日に公開された記事となります。
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