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日中韓ゲームアプリ輸出入の実情とは

スマホゲームの海外進出先として米国と並び選ばれる韓国・中国の市場の状況についてインタビューを通じて取り上げる企画の後編をお届けする。

前編では、韓国・中国ともに日本ほど「AppStore」「Google Play」の市場シェアは高くなく、メッセージアプリがプラットフォーマーとして重要な位置にいることなどを明らかにしたが、後編ではユーザーの意識やスマホゲーム輸出入の舞台裏などを取り上げたい。

前編に引き続き、株式会社ネクシジョン 代表取締役の黄 孝善(ファン ヒョウソン)氏、執行役員・マーケティングマネージャー 米村 貴志氏にご登場いただく。
――日中韓でのアプリ配信の違いはよく分かりました。一方でユーザーの動きには違いがありますか。
黄氏:
弊社では韓国で開発されたゲームを日本向けにローカライズする事業や、日中韓でのサービス展開経験を通じて各国の状況に接していますが、ご指摘の通りユーザーの意識には大きな違いが見られます。

例えばアイテム課金に対する意識ですが、韓国では課金しないとなかなか前に進まないようなゲームに対する嫌悪感が強く、無料でもそこそこ遊べないとクレームが寄せられてしまいます。

一方中国では、韓国ほど課金が忌避されることはありませんが、支払いをしたらその分はきちんとメリットが実感できるゲーム作りが求められています。

――ということは、韓国より中国の方がスマホゲームの市場規模が大きそうですね。
黄氏:
両者を比較すると、今は中国の方が大きくなりました。その影響もあって、韓国スマホゲームの中国進出が相次いでいます。

もともと、韓国のPCオンラインゲームが数多く中国市場に進出していたので、スマホゲームも同様のスキームで中国市場に展開していきました。

とはいえ、実態としては「韓国サイドからの輸出」というより「中国サイドによる輸入」による方法が多く、テンセントや奇虎360(Qihoo 360)など中国の有力企業が韓国のスマホゲームを国内に引っ張るかたちが中心です。この動きが顕著になったのはだいたい2013年ごろからでしょうか。

今では一歩進んで、中国のプラットフォームが韓国のスマホゲーム開発企業にM&Aを行うケースもあります。

――日本への進出を狙う海外の企業はありませんか。
黄氏:
規模の大きな日本市場に魅力を感じて直接進出した海外企業も多いですが、多くが撤退を余儀なくされています。例えばインドのコングロマリット、リライアンス・ADA・グループのReliance Big Entertainmentも2012年に日本でリライアンス・ビッグ・エンターテイメント・ジャパン株式会社を設立しましたが、2014年には解散しています。

成功例は「クラッシュ・オブ・クラン」のSupercellなどがありますが、あくまでレアケースです。

――逆に、海外のゲームを国内に輸入する動きはどうでしょうか。
黄氏:
ゲーム開発費用が高騰したこともあり、ゲームをイチから開発せず海外作品を引っぱってくるケースは増えています。

既に完成しているアプリを持ってくる、と聞くと簡単そうなイメージがありますが、ローカライズの作業もあって言うほど容易ではありません。

――ローカライズにはどの程度のコストがかかるのでしょうか。
黄氏:
ローカライズ方針によって千差万別です。極端な話、日本市場に完全に合わせようとフルカスタマイズしてしまうと新規にゲームを開発するのとあまり変わらないぐらいのコストにまで膨れてしまいます。

弊社の場合はフルカスタマイズではなく、どこまでするのかの判断で思い切った線引きをしています。

ユーザーの目に見える部分、文章やUI、デザインなどの部分は評価に直結しますから、しっかりとローカライズを行います。

一方で見えない部分のローカライズは必要最小限におさえています。ゲームの管理画面を日本語化せず、現地語のままにしておけば、管理画面を作成する時間とコストをカットできます。もちろん見えない部分のローカライズも一律に省くのではなく、課金システムやゲームバランス、イベントなどは適宜判断しています。

このような、修正幅を最低限におさえてリリースできる独自のノウハウを我々は構築しており、弊社がローカライズを手掛けた女性向け育成SLゲーム「栽培少年」は2ヶ月程度でリリースにこぎ着けました。

女性向け育成SLゲーム「栽培少年」
――日本に展開するゲームはどのように決めていますか。
黄氏:
現在弊社は韓国のスマホゲームを日本でパブリッシングする事業を中心としているので、韓国市場での動きを絶えず注視しています。

具体的には、弊社が提携している韓国のマーケティング会社が現地で数多あるゲームの中からまずは選定を行います。その後、弊社にて最終的にふるいをかけて国内展開するゲームを決定しています。

その基準は多岐にわたりますが、日本であまりリリースされていないユニークなゲームアプリを中心に選んでいます。「栽培少年」は、クオリティーの高さとあわせ、種を植えて美少年を収穫する"美少年栽培SLG"という斬新なコンセプトに着目しました。また、今春サービス開始予定の「灰色都市(原題)」はサスペンスアドベンチャーというテーマ性を持っています。

――韓国以外の国のゲームはどうでしょうか。例えば市場規模が韓国を上回っている中国のゲームにも可能性があるように思いますが。
黄氏:
中国スマホゲームの場合、IPやゲームシステムの"パクり"という重大な問題を抱えていることが多い点が課題です。

日本国内で人気のオンラインゲーム「艦隊これくしょん -艦これ-」のコピーが中国で「艦娘国服」として提供されていたことが話題になりましたが、一説にはこのような流用が全体の半分ぐらいあるのではないかとも言われています。いくら中国でヒットしたゲームでも、これをそのまま日本国内で展開することは不可能です。

――では最後に、今後の目標を教えてください。
黄氏:
我々ネクシジョンは日本、中国、韓国市場に精通したスタッフを抱えております。今後、その経験を活かし、海外ゲームを通して新たなゲームの楽しみ方や遊びを国内の皆さんに提供していきたいと考えています。

――本日はありがとうございました。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて3月27日に公開された記事となります。
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