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端末修理事業の現状と業界団体が果たす役割

携帯電話端末修理事業者の業界団体である社団法人スマートフォンリペア協会(SRA)は2月23日、事業者向けに活動内容等の説明会を行った。そこで今回は、端末修理事業の現状とSRAが果たす役割について整理してみたい。

SRAの活動内容

業務内容については、SRA理事の猿谷氏(スマホステーション株式会社 代表取締役)より、主に「登録修理業者申請のサポート」「会員向けの修理技術者研修」「修理技能試験」などを行うことが説明された。

「登録修理業者申請のサポート」では、テスト項目や運用管理体制など、具体的に申請を取得する際に必要となる事項に関して会員を支援していくという。実際の修理方法は「会員向けの修理技術者研修」を通じて提供し、修理に欠かせない交換部品もSRAが特性試験を行ったものを斡旋する方向が打ち出され、事業展開に必要な機能が準備される。2016年度には「修理技能試験」の実施も予定されており、修理スタッフの技能レベル平準化及び向上を狙う。

制度導入の背景は「グレーゾーンの解消」

説明会ではSRAの目的として「修理業界の健全化」も掲げられたが、そもそもなぜ修理事業が今までグレーゾーンとして取り扱われていたのだろうか。実は、修理が結果的に「変更」に該当してしまうかどうかがあいまいだった点が大きい。

国内で電波を利用するためには原則として総務大臣の免許を取得する必要がある。免許を取得する際、電波法ならびに電気通信事業法に定められた技術基準に適合していると登録証明機関から認証を受けた(いわゆる「技適」マークを取得した)端末の場合、免許取得時の手続きを簡略化することができる。スマートフォンに技適マークがあるのはこのためだ。

修理によって技適認証取得時の設計や電波特性に「変更」が加えられた場合、技適マークを除去する義務が生じる。また、技適マークが除去された端末は、免許取得手続きを経ずに利用することは違法となる。いずれも、従わない場合は罰則が課せられている。しかし、具体的にどのような修理が「変更」にあたるのか明確ではなかった。

そこで登録修理業者制度では、修理を「電波の質に影響を与えるおそれの少ないもの」と「影響を与えるもの」に大別し、前者については登録を行った事業者が一定のルールに則って修理をした場合、引き続き技術基準に適合している(同等性が確保されている=「変更」ではない)と判断されることになった。

では具体的に、どのパーツなら修理が可能なのだろうか。規定には「表示装置、フレーム、マイク、スピーカ、カメラ、操作ボタン、コネクタ、バイブレーター、電池その他の箇所であって、電波の質に影響を与えるおそれの少ない箇所」とある。

ただし、これらパーツが全て修理可能とは言い切れない。説明会でも指摘があったが、端末によっては例えばアンテナとコネクタが一体化しているものがある。このモジュールの修理は電波の質に影響を与えるものに該当してしまう。このように、機種ごとに修理可能な箇所は異なってくる。

制度の導入によってグレーゾーンは解消したが、登録事業者には特性試験の実施や申込書類の保存(10年間)といったコストアップ要因となる義務も課せられている。SRAでは事業者負担の軽減に向けた方策の検討も進めているそうで、今後の動きが期待される。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて2月26日に公開された記事となります。
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