週刊モバイルビジネス通信(4/28~5/12):

ソフトバンクとKDDIが通期決算を発表、両社の課題が浮き彫りに

1週間のモバイル関連ニュースを振り返る「週刊モバイルビジネス通信」。今回は連休前後の2週間分を対象とした拡大版だ。

今週は水曜日にソフトバンク、木曜日にKDDIがそれぞれ16年度連結決算を発表した。両社とも増収増益を達成、特にソフトバンクは営業利益が1兆円の大台する好調ぶりだった。しかし同時に課題も浮き彫りになった。

ソフトバンク

ソフトバンクの2017年3月期通期連結決算は、売上高が8兆9010億円(前期比0.2%増)、営業利益が1兆259億円(同12.9%増)だった。

同社は、売上と営業利益で主力事業が異なる点が特徴的だ。売上ではスプリント事業が全体の4割超を占める一方、売上構成比で35%程度に過ぎない国内通信事業が営業利益の7割を叩き出している。

利益の源泉である国内通信事業における懸念事項は、携帯通信料やコンテンツ収入を示す「移動通信サービス」売上の動向だ。低ARPUの「Y!mobile」利用者が増加したことで、17年度は前期比3.4%(667億円)減の1兆8866億円となった。

「SoftBank 光」などの固定系回線収入が伸びたことで、トータルの「通信サービス売上」は180億円増を確保したが、17年度以降もモバイルの減収を補いきれるのかが大きな課題と言えるだろう。

KDDI

KDDIの2017年3月期通期連結決算は、売上高が4兆7,483億円(前期比6.3%増)、営業利益が9,130億円(同9.7%増)だった。18年3月期は売上高4.2%増の4兆9500億円、営業利益4.1%増の9500億円を見込んでいる。

主力の国内個人向けでは、通信分野のパーソナル事業、非通信分野のバリュー事業ともに増収増益となった。モバイル・固定通信の利用者に非通信分野のサービスも提供し「au経済圏」を最大化させる戦略だが、肝心の顧客基盤に揺らぎが見え始めた。

同社が顧客基盤のKPIに掲げる「モバイルID数」は23.1万の増加だったが、この数字には連結子会社(UQ mobile、J:COM、BIGLOBE)のMVNO契約数も含まれる。MVNO契約数を除いた"真水"の「au契約者数」はこの1年で53.7万人の減少を記録している。

2016年度は契約者数の減少をARPAの増加が補って「au通信ARPA収入」は増加基調を維持できたが、17年度は補いきれず減少に転ずると同社は予想している。

17年度は「リテンションに250億円」(代表取締役社長 田中孝司氏)投下することを明らかにしており、au契約者数の減少がどれほど食い止められるのか、また今後増加するMVNOユーザーがau経済圏の拡大にどれほど貢献するのかが今年度の課題と言えるだろう。

【今週号の目次】
週間ニュースダイジェスト
4/28(Fri)
  • ソニー、2017年3月期通期連結決算を発表。売上高は7兆6033億円(前年度比6.2%減)、営業利益は2887億円(同1.9%減)。モバイル・コミュニケーションセグメントの営業利益は102億円で、昨年度の-614億円からプラス転換。一方、半導体及び映画セグメントの営業利益は昨年の黒字から赤字に。
    - https://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/library/download/
  • シャープ、2017年3月期通期連結決算を発表。売上高は2兆0506億円(前年度比16.7%減)、営業利益は624億円(黒字化)。
    - http://www.sharp.co.jp/corporate/ir/library/financial/
  • スマートモバイルコミュニケーションズ、MVNO「スマモバ」で国内10分かけ放題「スマート通話定額プレミアム」を開始。月額850円。NTTコム「0035でんわ卸」を活用し導入。1分以内の通話が1日50回までかけられる「スマート通話定額60」(月額398円)も継続提供。
    - https://smamoba.jp/info/press_20170427c.php
4/30(Sun)
  • Cygamesが16年11月に設立したLogicLinks、ゲームプレイヤー向けMVNO「LinksMate」を7月開始へ。5GB1500円など4プラン。Cygames「グランブルーファンタジー」「Shadowverse」やブシロード・CraftEgg「BanG Dream! ガールズバンドパーティ!」等のゲームアプリに加え「AbemaTV」「twitter」等がカウントフリーで、対象アプリの90%以上通信量が節約できると謳う。ゲーム内アイテムの付与も。サービスに先立ち先行会員登録受付を開始。
    - https://linksmate.jp/news/1/
5/2(Tue)
  • NTTぷらら、MVNO「ぷららモバイルLTE」のサービス提供を17年11月30日で終了へ。新規受付は5月2日で終了。既存利用者にはNTTコム「OCN モバイル ONE」のキャンペーンを案内する方向。
    - https://www.plala.or.jp/support/info/2017/0502/
  • USENがカード決済サービス「USEN PAYGATE」の販売を1日より開始。iOS搭載端末にBluetoothで接続して操作。接触ICと磁気ストライプに両対応。Visa・MasterCard・JCB・AMEX・diners・discoverの6ブランドに対応、決済端末の月額レンタル料は無料。カード決済手数料はUSENの他サービス利用状況により変化。
    - http://www.usen.com/news/release/2017/20170502_194.html
  • スマートモバイルコミュニケーションズ、MVNOブランド「スマモバ」でワイモバイル回線を用いた「スマモバ(Y)」を開始。データ1GB 2980円、3GB 3980円。いずれも国内通話10分かけ放題付き。
    - https://smamoba.jp/info/press_20170502.php
  • イッツ・コミュニケーションズとConnected Design、両社開発のスマートホーム「インテリジェントサービス」を「IFTTT」に登録し10日より公開へ。IFTTTのルール設定機能で「天気アプリが28度を通知したら冷房を付ける」などが可能に。
    - http://www.itscom.jp/nrelease/fy2017_release/55973.html
5/8(Mon)
  • ミツウロコクリエイティブソリューションズ、日本電気(NEC)、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)、SIGFOXによるLPガス配送業務効率化ソリューションを共同開発。協業を開始し2018年の事業開始に向けた実証実験に着手。LPガスメータからSIGFOX経由でNECのクラウドにデータを蓄積、ガス消費量をミツウロコクリエイティブソリューションズが把握。NECのAIを活用しLPガス配送の最適配送も可能に。
    - https://www.mitsuuroko-creativesolutions.com/pdf/170508_news.pdf
  • 富士通、歩行移動しながらでも自律的にネットワークが構築可能なIoT向けアドホック無線通信装置「FUJITSU Network Edgiot AHシリーズ」の提供を開始。920MHz帯無線を活用し電波状況の悪い環境でもマルチホップ通信によるネットワークの構築が可能。鴻池組と地下等での実証実験を行い有効性を確認。3年間で10万台目指す。
    - http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/05/8-1.html
5/9(Tue)
  • ソフトバンク、8月1日から通信速度制御の実施条件を緩和へ。従来、前々月の月間で約1.2GB以上、または過去3日間で約1GB以上で制限の対象となったが、過去3日間で約3GB以上のみへと緩和。制限期間も1ヶ月間が24時間に短縮。3Gケータイの一部プランについては制限を撤廃。
    - http://www.softbank.jp/mobile/info/personal/news/support/20170509a/
  • UPQ、スマートフォン「UPQ Phone A01X」のバッテリーが過熱し焼損した事故の原因がバッテリー及び充電制御であると特定。昨年9月の顧客報告から8ヶ月経て。今後の対応は5月下旬を目途に案内へ。
    - https://upq.me/jp/news/20170509/
  • ノジマがデジタル家電専門スマホアプリ「nojima フリーマーケット」の提供を開始。無料で出品でき、販売額の10%を利用料として徴収。バーコード・製品型番でスペック入力を省略できる機能などを搭載。ノジマ店頭やカスタマーセンターでの出品サポートも。
    - http://www.nojima.co.jp/news/category/info/5215/
5/10(Wed)
  • ソフトバンク、2017年3月期通期連結決算を発表。売上高8兆9010億円(前期比0.2%増)、営業利益1兆259億円(同12.9%増)。スプリント売上は円高影響で円ベースで減少だがドルベースでは増加と強調。
    - http://www.softbank.jp/corp/news/press/sb/2017/20170510_07/
  • ソフトバンクグループ、Sprint Corporation、Qualcomm Technologiesの3社は、2.5GHz(Band 41)において3GPPのNR(New Radio)規格を含めた5G技術の共同開発で合意。19年後半にも商用サービスと端末の提供を予定。
    - http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2017/20170510_01/
  • ソラコム、IoT向けデータ通信サービス「SORACOM Air for セルラー」で新料金体系を5月16日より提供へ。より少ないデータ送受信用途を想定し、基本料を現プランの0.06USD/日から0.4USD/月に値下げしたのが特徴。その分、従量制のデータ通信料金は割高に。
    - https://soracom.jp/press/2017051001/
5/11(Thu)
5/12(Fri)
  • 高市総務大臣が閣議後記者会見で、キャリア決算発表を受けた通信市場の競争環境に言及。「各事業者とも、是非とも、工夫をして料金とサービスの競争に取り組んでいただきたい」「新たな料金プランを発表してくださった事業者もありますので、今後まだまだ引下げに期待ができる」と料金低廉化に期待感示す。
    - http://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/01koho01_02000003.html
  • 総務省、「平成28年度電波の利用状況調査結果」を公表。移動局やフェムト等を除いた携帯無線局(基地局)数(3月1日時点)は、800MHz帯が11.3万局、1.5GHz帯が12.4万局、1.7GHz帯が4.9万局、2GHz帯が7.6万局など。「平成28年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見募集も開始。
    - http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000221.html
  • ノキアソリューションズ&ネットワークスとKDDI、埼玉県ふじみ野市で28GHz帯の5G伝送実験を共同実施と発表。KDDI総合研究所に設置した基地局と、100mほど離れた集合住宅のあいだで1Gbps超の通信速度を達成。
    - https://networks.nokia.com/jp/news/2017/20170512
  • プラスワン・マーケティング、同社製スマホ「FREETEL MUSASHI」を香港の通信キャリアCSL Mobile Limitedが販売開始すると発表。母の日キャンペーンの主力製品のひとつとして。
    - https://blg.freetel.jp/news/19462.html
  • オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパン、「CAT」ブランドのSIMフリータフネススマホ「S40」を5月下旬に発売へ。1.8m落下試験をクリアし防水・防塵「IP68」にも準拠。
    - http://www.jp.onkyo.com/news/newproducts/audio/cat_s40/index.htm
今週の注目記事
  • iPhone失速?「販売台数減少」はヤバいのか(東洋経済ONLINE
  • 孫正義の有言実行、米スプリント復活の軌跡(ITPro
  • ソフトバンク、Tモバイルに米携帯子会社との統合提案へ(日本経済新聞
  • 隙あらばキャッシュバック、懲りないソフトバンク(ITPro
  • 速度制限でスマホゲームができないのは機会損失--LogicLinksがMVNOに参入した狙い(CNET Japan
  • iPhone修理の現状と注意点(ITmedia
  • Apple、1~3月期決算は増収増益、iPhoneの販売台数が予想を下回る(マイナビニュース
  • ドコモ、自動車分野に本格参入 7月、社内に新組織(SankeiBiz
  • ドコモ販売店に定休日 8割2000店で負担軽減、営業時間も短縮(SankeiBiz
  • ノジマ、ソフトバンクの販売店運営を集約(日本経済新聞
  • 【トップは語る】沖縄セルラー電話 新規事業の水耕栽培機器 地元に貢献(SankeiBiz
  • ジュニパー古屋社長「IoT時代を"ネットワーク自動化"で支える」(ビジネスネットワーク.jp
通信関連事業者 今週の主な報道発表
4/28(Fri)
  • NTTぷらら、マイラインサービス「ぷららフォン」を7月末で終了へ。8月1日以降は「009191+相手先電話番号」の通話が利用不可に。(NTTぷらら
4/29(Sat)
  • UQコミュニケーションズが実店舗「UQスポット」新店2店を29日開店。神奈川県藤沢市の「UQスポット 湘南モールフィル」と愛知県名古屋市の「UQスポット 大須」。(UQコミュニケーションズ
5/1(Mon)
  • NTTドコモ、インドのタタ・グループとの係争に関し高等裁の判決取得。ドコモ保有のTTSL株式譲渡と引き換えに、タタ・サンズからドコモへ11億8千万米ドル(約1300億円)の支払命ずる内容。(NTTドコモ
5/9(Tue)
  • KDDI、新潟県長岡市山古志で、日本初の「4G LTE運航管理システム」を用いた、「スマートドローン」による4G LTE完全自律飛行実験を実施。約2km離れた場所への長距離飛行に成功。(KDDI
  • NTTドコモ・ベンチャーズ、クラウド・オーケストレーション向けのソフトウェアフレームワークの開発・販売を行うアイルランドのスタートアップ企業、UBiqube社に出資(NTTドコモ・ベンチャーズ
5/10(Wed)
  • NTTデータ、2017年3月期通期決算を発表。売上高は1兆7324億円(前期比7.3%増)、営業利益は1171億円(同16.1%増)。18年3月期は売上高18.9%増の2兆600億円、営業利益2.5%増の1200億円を予想。(NTTデータ
  • NTTデータ、17年7月1日付でグローバルビジネス推進・管理体制を強化へ。グローバル事業本部内にあるグローバル横断機能を、本社組織として新設するグローバルマーケティング本部に移管。中国・APAC事業本部を新設し強化。(NTTデータ
5/11(Thu)
  • ソフトバンク、「+Style」監修による"男の趣味のガレージ"をコンセプトにしたデジタルプロモーションストア「ミライデジタルボックス」を三越伊勢丹新宿店メンズ館1階に期間限定開店へ。5月15日から6月13日まで。(ソフトバンク
  • NTTデータ、子会社のNTT DATA Asia Pacific Pte. Ltd.を通じて、インドネシアのAbyor社の子会社化で最終合意。インドネシアでのSAP事業の拠点およびリソースを確保し、インドネシアでのSAP事業の拡大や同国日系企業向けビジネス拡大目指す。(NTTデータ
  • KDDI、役員人事を内定。取締役の田島英彦氏と久芳徹夫氏が退任し、森敬一氏と山口悟郎氏が新任取締役に。6月21日の株主総会等を経て。(KDDI
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