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導入が広がりつつあるMVNOのゼロ・レーティングを整理する

料金体系やサービス面で違いを打ち出しにくいと言われるMVNOだが、新たな差別化策として徐々に導入が広がりつつあるのが「ゼロ・レーティング」だ。

特定のアプリやサービスを利用した際のデータ通信を課金対象から外すことを指している。使ったデータ量としてカウントしないことから「カウントフリー」とも呼ばれている。

ちなみに「カウントフリー」はNTTコミュニケーションズが2015年に商標登録している。そこで本稿ではゼロ・レーティングとして表記していきたい。

上の表は、ゼロ・レーティング機能を採用した料金体系を持つ主なMVNOと、各サービスがどの通信を無料化の対象にしているかをまとめたものだ。ゼロ・レーティングと一口に言っても、無料化対象はSNS系・コンテンツ系ともに多岐にわたっている。

また、表には記載していないが、自社サービスを無料化するMVNOもある。OCN モバイル ONEが「050 plus」など、J:COM MOBILEが「J:COMオンデマンドアプリ」を無料化しているのが代表的だ。

利用者にとってはお得な機会が増えたといえるが、実際には課題も残る。

無料かどうかを判定するために通信の中身を確認する行為が「通信の秘密」に抵触しないか、「ネットワーク中立性」の観点から特定サービスだけを優遇してもよいのか、など、ゼロ・レーティングには議論途上の論点がある。

また、利用者側の認識と実際の請求に齟齬が出る可能性もある。各サービスとも無料化対象の条件を公開しているが、一方で「アプリケーションの更新に伴う識別子の変更などの理由により(無料化の)対象外として認識される場合がある」「他のお客様の迷惑となる場合に、一時的に通信を制限する場合がある」「ネットワークに影響があると判断される使用と当社が判断した利用者には、翌月から課金する場合がある」など、事業者側に有利な例外規定も見受けられる。契約を検討する場合は、提供条件をしっかりと確認する必要がありそうだ。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて6月19日に公開された記事となります。
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