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携帯事業参入目指す楽天、背景に見える「Yahoo!・ソフトバンク陣営への対抗」

楽天は12月14日、携帯キャリア事業への新規参入を目指すと正式に表明した。総務省が新たに割り当てる予定の1.7GHz帯及び3.4GHz帯の周波数に対して申請を行うもので、認められれば新たな携帯電話会社が誕生することになる。

その背景には、携帯利用者のEC送客を狙うYahoo!・ソフトバンク陣営への対抗が見え隠れする。

Yahoo!では、ショッピングやオークションなどサービス利用時の付与ポイントを増量する特典が得られる有料会員サービス「Yahoo!プレミアム」を展開しているが、ソフトバンクまたはワイモバイルの契約者に対しては実質無料で特典を付与し顧客の囲い込みを進めている。

ワイモバイル利用者は2月から、ソフトバンク利用者は6月から無料となったことで、会員数は1年前に比べ568万増の1793万(9月末)まで拡大している。ヤフーによれば、まだソフトバンク契約者の4割以上は同会員になっていないとのことで、まだ伸びしろが多く残っている。

一方の楽天も、MVNO「楽天モバイル」利用者に対してショッピングのポイントを増量する枠組みを構築しているが、楽天モバイル契約数は140万程度のため規模感が大きく異なる(事業買収したFREETEL契約者は今のところ特典対象外のため、恩恵を受けられる利用者はもっと少ない)。そもそも、NTTドコモから通信網を借りるMVNOのビジネスモデルは、参入が容易な反面、利益が出にくい欠点もある。

楽天は今回の参入で1500万人以上のユーザー獲得を目指すとしており、契約数の上積みと収益確保の両面を狙うものとみられる。

最後に、両陣営の現在の状況を整理してみよう。

開示条件が異なるため単純比較が難しいが、ショッピングやオークション、宿泊、飲食店予約、デジタルコンテンツなどを含めたEC流通総額をみると、楽天がヤフーを大きく上回る状況は以前と同様だ。

(注釈)各社数値に含まれる主な事業は以下の通り。「楽天 国内EC流通総額」=楽天市場、トラベル、チケット、ダイニング、ビューティ、楽天ペイ、クーポン、フリルなど。「ヤフー eコマース国内流通総額」=オークション関連取扱高(ブックオフオンライン、チケット等含む)、ショッピング関連取扱高(トラベル、デジタルコンテンツ、飲食店予約等含む)、アスクル(BtoBネット経由)売上。

とはいえ、C2C(オークション、フリマ)流通総額に限れば、楽天が年換算で1000億円程度に対しヤフーは四半期ごとに2000億円超と大差が付くなど、カテゴリーによって優劣の状況は大きく異なっている。

申請が認可されない可能性もあるが、楽天が事業参入することで、携帯電話の顧客基盤とポイントを軸にした経済圏の拡大競争は新たな段階を迎えそうだ。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて2017年12月15日に公開された記事となります。
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