グラフで比較するキャリア決算(1):

事業法改正の影響でユーザーの流動性が低下、各社の解約率が軒並み過去最低水準に

携帯キャリア各社の2019年10~12月期決算が7日までに出揃った。今回から、3社の主要数値を比較していく。まずは解約率に焦点を当てる。

決算説明会では3社揃って数値改善をアピール

2019年10~12月期における各社の解約率は、NTTドコモが0.47%(スマートフォンとフィーチャーフォンの解約率を示す「ハンドセット解約率」は0.37%)、KDDIが0.61%、ソフトバンクが0.86%(スマートフォン解約率は0.53%)だった。

決算説明会では、各社ともに「大幅改善」「過去最低」などの文言とともに解約率の低減を示すグラフを示している。

図:各社決算説明会における「解約率」掲載ページ

実際どの程度低減したのか、ここ数年の解約率推移を整理してみると、確かに軒並み過去最低水準になっていることが分かる。

解約率低下の背景には、事業法改正によって端末値引きに規制がかかった側面が大きい。NTTドコモはアナリスト向け説明会において、自社が分離プランを先行導入した一方で「他社は9月末まで販売代理店等による端末キャッシュバック施策を含む様々な販売を行ってきた」ことから7~9月期は防戦に追われたが、10~12月期は「携帯3事業者の競争条件が同じとなった」ことから解約数が大きく改善した、としている。また、改善の中身についても、他社からの「高価格端末を安く販売」する攻勢に反応するユーザーの解約率がより減少した、と明らかにしている。

顧客流出の減少は、防戦側にはメリットだが、攻める側にとっては不利な環境になったとも言える。KDDIは「10月の事業法改正以降、特に新規獲得が厳しかった」との認識を示している。

4月の楽天の本格参入による市場環境変化、契約解除料のない新料金プラン契約者の増加による影響など、解約率に影響を与えうる事項も控えており、今後の推移にも注視していきたい。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて2月10日に公開された記事となります。
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