モバイル業界スナップショット:

ドコモのNFV実験から透けて見えるベンダー間競争の一面

スマートフォンへのシフトが進む一方で、それを支える通信インフラが大きな転換期を迎えている。その代表的な技術として注目を集めているのが、NFV(Network Functions Virtualisation)である。

先ごろ、NFVの商用化実験について、NTTドコモが成功したことを発表したが、今回のスナップショットでは、そこに参加した機器ベンダーから透けて見えるNFV時代の競争の一面ついて切り取ってみたい。

NTTドコモのNFV導入へ向けたスケジュール
(出典:MCA)

NFVとは、これまで高価な専用ハードウェア中心だった通信キャリアのネットワーク構成を、仮想化技術を使い汎用サーバーに置き換えネットワーク機能を提供しようとするもの。これにより、災害時などのトラフィック急増に対する「柔軟なリソース配分」(例:動画コンテンツ抑制)や共通のプラットフォームからのリソース活用による「迅速な新サービス提供」、そして高価な専用機器から汎用機を活用することによる「コスト削減効果」などが期待されている。

国内の携帯キャリアのなかで、NFVの尖兵を付けたのが、NTTドコモである。今週、同社は2015年度の商用化へ向け、LTEのパケットコアであるEPC(Evolved Packet Core)部分について、異なるベンダー間の組み合わせでも動作するNFVの実証実験を行い、成功したことを発表した。

これまで同社は、単一ベンダーによる実証実験は成功させてきたものの、仮想化基盤とソフトをマルチベンダーから調達できればコスト効果が期待できるとして取り組んできた。

今回の実証実験に参加したベンダーは、NEC(日本)、シスコシステムズ(米国)、エリクソン(スウェーデン)、ファーウェイ(中国)、アルカテル・ルーセント(仏)、ノキアソリューションズ&ネットワークス(フィンランド)の6社となっている。

上記参加ベンダーの中で、関係者の一番のサプライズだったのがファーウェイではないだろうか。これまでタブレットやポケットWi-Fiなどの機器ではNTTドコモと取引があったものの、インフラ部門では一部を除けば今回が本格的な取り組みとなる。実験段階とは言え、次世代のインフラ技術の参加ベンダーとして入った意味は大きい。世界最大の携帯キャリアであるチャイナモバイル向けにNFV(トライアル実験)で実績があり、そうした点が評価されたのかも知れない。

その一方で、劣勢に立たされたのではないかと邪推してしまうのが、国内系のインフラベンダーである。これまでNTTドコモのインフラ関係では、NECと富士通といった国内系が中心に機器を提供してきたが、上記の参加ベンダーを眺めると、果たしてその関係性が続くのか。ちなみに、今回のEPC分野について、これまではNECと富士通が中心となって機器を供給している。

もちろん今回はあくまで実証実験への参加ベンダーということで、商用化段階になれば改めて供給ベンダーが決められていくことになる。しかし、既に他の携帯キャリアでは、先に述べたような外資系ベンダー中心の供給体制へとシフトしてきており、国内ベンダーにとってNTTドコモはある意味、『最後の砦』でもある。NFVという大波が、機器ベンダーの競争構図にどのようなインパクトをもたらすのか。そうした観点からも、行方に注目していきたい。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて10月17日に公開された記事となります。
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