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2020年代に向けた情報通信施策の方向性を占う

クーリングオフやSIMロック解除など、今年は情報通信に関する現行制度の見直し機運が例年になく高まっている。総務省において検討が進められている背景には、電気通信事業法の附則で「(2011年の)法律施行後3年を目途に有効性や適正性の検証を行う」ことや、「日本再興戦略」の中で2014年中に制度見直しの方向性について結論を得るよう明記されていることが挙げられる。

そんな中、10月8日に行われた情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会 基本政策委員会の中で、今までの議論をもとに「2020年代に向けた情報通信政策の在り方 報告書(案)」が取りまとめられた。参考資料を含めると100ページ以上に及ぶ報告書案をもとに、今後の情報通信施策の方向性を占ってみたい。

上の表は、検討会において議論された主な制度のうち、見直しの方向性が打ち出されたり検討を進めることが妥当と判断されたもの(盛り込まれた項目)と、議題に上ったものの今後の課題となったもの(見送られた項目)をまとめたものである。

事業者間の競争では、NTTドコモを念頭に、通信市場において高いシェアを持つ支配的な事業者に対して、公正な競争を阻害しないよう設けられた「禁止行為規制」が緩和される方向だ。特定企業に対して独自端末を通信とセットで提供しやすくなるなど、異業種との連携を加速させる方針が打ち出された。

一方、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3グループとなっている携帯市場の実態を踏まえ、周波数割当や規制対象事業者の指定において個別事業者単位ではなくグループ全体の実態を踏まえて評価すること、寡占化を防ぐため合併や株式取得などを行う際に総務省が審査できる規律を導入することが盛り込まれた。

SIMロック解除については「ICTサービス安心・安全研究会」の報告書案に基づき「最初からSIMロックをかけない」か「一定期間経過後は利用者負担なく解除に応じること」とし、解除が行われた場合の端末サポート体制の整備やAPN設定などの課題を整理し、解除前には一定の準備期間を設けることが妥当とされた。

一方で「高額キャッシュバック」「クーリングオフ」「2年縛り」に関して、今回の報告書案で規制の導入は見送られた。議論の中で、事業者側が「契約前に通信品質を試せるサービスを導入する」「解除料を支払わずに解約できる期間を延長する」などの譲歩案を打ち出したためだ。

これら施策の内容は、パブリックコメントの募集などを経て実行に移されるものとみられる。通信事業の将来にかかわる大きな制度見直しであり、今後の動向にも注目していきたい。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて10月10日に公開された記事となります。
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