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スマートフォンへの踏み込み具合が差となって表れた携帯3社の中間決算

 携帯大手3社の中間決算が出揃った。

2010年度2Qの結果は下記の通り。
        
 -NTTドコモ:減収増益/純増数 81万/ARPU5,200円(前年同期比-220円)
 -KDDI:減収減益/純増数 42万/ARPU5,100円(前年同期比-500円)
 -ソフトバンク:増収増益/純増数160万/ARPU4,300円(前年同期比+150円)

 2008年よりiPhoneを投入し、スマートフォン時代をリードするソフトバンクは、純増数×単価の両面で増収増益を記録。移動体通信事業の営業収益は、前年同期比13%増の9,400億4,400万円、営業利益は前年同期比57.3%増2,072億300万円だった。純増数では前年同期比の68万から160万へ大きく増加させ、ARPUは4,300円と前四半期から150円増加した。なかでも特筆すべきは、データARPUが前年同期より300円増加し、データARPUと音声ARPUが逆転したという点である。今後10年以内にウィルコムの加入者を含め(合計で約2,800万)、ソフトバンクモバイルで4000万回線の獲得を目指す方針が明らかにされた。

 これに対してドコモは、前年同期は減収減益だったが、今期は減収増益を確保するなど、回復基調へ転じつつある。営業収益は2兆1,382億円で同0.4%減、営業利益は5,315億円で同9.5%増だった。最大の加入者数を抱えるだけに、構造的に純増競争では不利であるものの、そこはリテンション対策の強化で純増数を確保し、動画や電子書籍サービスを強化することで、伸びシロがまだある定額制(加入率58%)への移行を推し進めARPU上昇を狙っている。下期は、「スマートフォンのラインアップ拡充や定額制ユーザーの拡大、フィーチャーフォンユーザーのパケット利用の促進、モバイルW-Fiルータや通信対応フォトフレームなどの新デバイス投入によって、更なるデータARPUの向上」を目指す。そして新たな取り組みとして電子書籍やカーナビサービス、LTEの商用サービスにも注力する考えだ。

 KDDIは、前年度の純増数(2009年度上半期39万)と比較すると今期は42万と増加傾向にはあるとは言え、依然ライバルとの差は大きい。移動通信事業の営業収益は前年同期比2.4%減の1兆3,052億円、営業利益は同9.0%減の2,477億円の減収減益だった。取り組みが遅れたスマートフォン投入やシンプルコースへの移行拡大にともなう音声ARPU減が続いており、今期は前年同期比500円のマイナスと最も大きい下げ幅を記録した。下期は、新社長の体制のもと、「スマートフォンの強化と電子ブックリーダー、Wi-Fiルーター、タブレット型端末等の新たなデバイスを積極投入」「データ利用推進、データARPU向上に向けた取り組みのさらなる推進」で失地回復を狙う。
 
 各社の決算を総括すると、今回はスマートフォンへの踏み込み具合の差が大きく結果に反映したカタチとなった。ところで、スマートフォンが業績に影響を与える状況というのは国内だけの話ではない。ノキアなどグローバル端末ベンダーもスマートフォンの行方が業績を左右しており、今や世界的な流れとなっている。個人的には、LTE商用化を前に、こうした話題がここまで脇に追いやられた感のある状況に、いささか寂しさを感じてしまうのだが。

 自らの土俵にライバルを引き込むソフトバンクの戦い方に、各社がどのように挑んで行くのか、2010年度下期から次世代モバイルネットワーク時代の新たな競争の幕が開こうとしている。