Column:

モバイル&ワイヤレス市場で繰り返される携帯電話への『同質化』の流れ

 携帯電話の自由化前からマーケット分析をやっている身として感じるのは、モバイル&ワイヤレス市場の成長の影で常に携帯電話にその他の競合製品は影響を受けてきたということである。

 顕著な例を1つ取り上げればPHSである。もともと固定電話のコードレス版として開発され、端末と回線を分離し、インセンティブ型のビジネスモデルを否定してきたはずなのに、いざ商用化されると携帯電話の1つとして泥沼の競争に巻き込まれ、結果はご存知の通りだ。

 市場でもともとのPHSのコンセプトでは戦えず、そのまま突き進んでいったらもっと悲惨な結果に終わったという意見もあるかも知れない。しかし、それは誰にも分からないし、そこが本稿の論点ではない。

 事実は、携帯電話の土俵に引き込まれ、次々に投げ飛ばされていったということである。

 モバイル&ワイヤレス市場で絶対的な地位にある携帯電話の存在は、他の競合サービスを育ちにくくしているという負の側面かも知れない。

 そして、その流れで先日のニュースで気になったのが、モバイルWiMAXのUQコミュニケーションズが年間契約プランを条件に月額料金(3,380円)を引き下げる新料金プラン「UQ Flat 年間パスポート」を導入すると発表したことである。

 モバイルWiMAXのビジネスモデル上の特徴の1つは、「契約期間の縛りがない」という点にあったはずだ。今回、その'禁じ手'を解禁してまで携帯電話で主流となっている契約期間で縛るカタチに近寄ってきたことにどういった狙いがあるのか、色々と想いを巡らす。

 健全な市場が続くためには健全な競争相手が必要だが、今となっては携帯電話はあまりに突出しており、その他の競合サービスが生存できる領域が少なくなっていることは間違いない。

 しかし、携帯電話への『同質化』はかつてPHSがそうだったように純増数など一時的な効果をもたすらすものの、長期スパーンで見ると、投与の仕方によっては産業そのものの根幹を揺るがす劇薬になる可能性があることも認識すべきではないだろうか。