iPhoneの『特異性』と『破壊力』

 最近の調査会社から発表されるスマートフォンのOS別マーケットシェアを見ると、世界全体ではAndroid躍進が鮮明になる一方で、日本市場ではiOS優勢の状況となっている。

 国内ではNTTドコモが新たにiPhoneの取り扱いを開始したことが影響し、2013年度Q3期ベースではスマートフォン出荷台数の半分程度を獲得したと見られている。iPhone寡占化の状況は、例えばITmediaが毎週発表している携帯販売ランキングからも見て取ることができる。

 アップルの2013年7~9月期決算によれば、世界の売上高の4分の1は日本と中国が占めており、なかでも日本ではNTTドコモによるiPhoneの取り扱い開始が貢献し4割増を記録した。サムスンの攻勢もあり、主力の米欧市場が停滞するなか、今や日本市場はアップルにとってホームグランドと化している。

 では、そもそも何故、日本市場だけはアップルが今だに制空権を持っていられるのか?最も分かりやすい理由としては、日本市場ではサムスンの勢力が弱いからである。

 海外では、高級路線から低価格まで幅広い端末ラインナップを取り揃えライバルを駆逐してきたサムスンだが、こと日本では決して成功しているとは言えない。今年の春は、NTTドコモからツートップ戦略の一角としてシェア拡大を狙ったものの、思うような成果を上げられていない。

 年に1機種しか新製品を発売しない端末ベンダーが幅を利かせていることが市場として健全なのかという疑問もあるのだが、先に述べているように出荷台数の半分程度がiPhoneだとすると、アップルから見れば全キャリアに端末を供給しているわけで、市場を完全にコントロール下に置いているように映る。

 実際、アップルの事情に明るい関係者によれば、アップルはモバイルキャリアの正確な在庫情報をリアルタイムに把握し、モバイルキャリアは代理店と化しているというコメントをよく耳にする。今は、三社横並びでiPhoneを取り扱い、各社が競ってインセンティブを投下し値段を下げることで端末が更に売れるという、まさにアップルにとっては自分の財布が傷むこともない理想のスパイラルなのではないだろうか。

 もっとも、iPhoneが売れている理由はそれだけで片付けることはできない。利用者のアンケート調査をやってみて一番驚かされるのは、iPhone利用者の満足度の高さだ。弊社で実施しているデータによれば、iPhone利用者の9割以上が「次もiPhone」と答えているのだ。

 iPhoneは、それほどの破壊力を持っていたからこそ、モバイルキャリア中心のエコサイクルを顧客ファーストへと転換させたし、たった1つの製品が市場や業界を変革することができたのである。その点で、そのパワーはiモードの比ではないことだけは明らかではないだろうか。