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ピークアウトする携帯会社の設備投資と課題

携帯各社における2014年度上期決算が発表された。この中で、顕著なのが設備投資額抑制の動きである。LTEネットワークの面的展開と高速化が一段落したことが大きな理由だ。今回は大手3社で合計1兆5000億円程度が投じられる設備投資の行方に注目してみたい。

※KDDI(au)は移動通信事業、ソフトバンクモバイルが国内投資合計。
※NTTドコモとソフトバンクモバイルの2014年度以降はキャリア予測。
※KDDI(au)の2015年度以降は「通信建設業者便覧 2014」からの引用(MCA推定)。

2014年度中間決算で減収減益だったNTTドコモは、2015~2017年度までで3000億円規模のコスト削減を目指すとしているが、そのターゲットの1つとなっているのが設備投資である。今回の発表では従来7000億円規模の投資額が2015~2017年度は年間6500億円以下に抑制されることになった。NTTドコモとしては、設備投資額は削減するものの、ネットワーク品質の向上は引き続いて取り組む姿勢である。この背景には、基地局の小型化に伴い、基地局や置局工事単価の引き下げが見込まれ、数多くの小型基地局を設置しても投資額は高騰しにくいという事情があるようだ。

NTTドコモ以上に投資抑制が加速しているのがソフトバンクモバイルである。同社はここ数年、900MHz帯やLTE向け投資に重点を置いてきたが、現在は国内投資のピークが過ぎ、今後は大型投資が終息していく方向にある。親会社のソフトバンクの国内投資計画では、2014年度は2012~2013年度を下回る予定になっている。2012~2013年度は高水準な投資が続き、それぞれ6316億円、7125億円となったが、2014年度は5150億円と落ち着きをみせる。2015年度以降も大幅に抑制が続き、2015年度は4250億円、2016年度が3750億円となる。

LTEサービスの高速化に注力しているKDDI(au)は、2014年度にCA(Carrier Aggregation)によるLTEサービスの下り最大150Mbps化に力を入れており、2013年度末時点で700局だった対応基地局数を今年度末までには2万局まで拡大する計画だ。高速化の強化に伴い、移動通信事業向け設備投資は近年で最も多い3800億円が計画されている。しかし、関係各社を回って話を伺ってみると、今後は投資を抑制してくるとの声が多く聞かれる。

こうした携帯各社の設備投資抑制の動きは、必然的に基地局や通信建設市場に大きな影響を及ぼすことになる。なかでも小型基地局の需要拡大は、通建業者にとっては、工事量は増加するものの工事単価下落が見込まれることから、どのように利益確保が図れるのか、課題となっていきそうだ。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて12月12日に公開された記事となります。
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