5Gをめぐる最新動向(2):

国内モバイルキャリアの5Gサービス実証実験の方向性を整理する

MCAでは、7月に「第5世代移動通信 技術・設備投資動向・関連産業サービス開発動向 2018年度版」という調査レポートを発刊した。

今回も、同レポートより5Gの最新動向についてご紹介したい。第二回目は、国内のモバイルキャリアの5Gサービス実証実験の方向性について整理していきたい。

上図は、国内モバイルキャリアが公表している5G実証実験を、5Gの主要技術要素に基づく3つのスコープに分類した図である。

国際電気通信連合ITUは、5Gの主要技術要素として、大きく3つのスコープに分類されるとしている。それは、超高速(eMBB(enhanced Mobile Broad Band))、超低遅延(URLLC(Ultra Reliable and Low Latency communication))、そして、超多数同時接続(mMTC(massive Machine Type communications))の3つである。

超高速eMBBでは、現在の第4世代移動体通信システム(LTE)より100倍の速度を実現する。超低遅延URLLCでは、利用者が遅延を意識することなくリアル タイムな遠隔制御を実現する。超多数同時接続mMTCでは、移動体通信端末を含め身の回りのあらゆるものがネットワークに接続する世界を実現する。

上図より、国内モバイルキャリアが現在実施している5G実証実験は、現時点では超高速eMBBを中心とした実験が進めていることが見える。

これは、現在2020年頃にサービスインが予定されている5Gが、導入当初は4GLTEシステムを流用する形で実現されるNSA(Non Stand lone)方式で導入される予定であることが背景にある。

NSAでは、移動体通信システムのRAN(Redio Access Network)に、現在の無線通信方式を拡張した方式であるNR(New Redio)を導入することにより実現される。そのため通信速度としての大幅な向上が期待される。

現時点で国内モバイルキャリアは、NSAによる5G導入を意識した実証実験を中心に進めていると考えられる。

一方、その他のスコープ、超低遅延URLLC、超多数同時接続mMTCは、SA(Stand Alone)方式の導入後に本格的な実現となる。これらのスコープは、これまでの通信速度の向上だけとは異なる5Gならではの革新であるといえる。

超低遅延URLLCでは、リアルタイム性を生かした、自動車の自動運転や遠隔操作などのサービス実現が想定されている。また、超多数同時接続mMTCでは、現在のIoTを大幅に上回る多数接続社会を意識したサービスが想定される。

国内モバイルキャリアは、現時点では、間近に迫った5G導入に向けて超高速eMBBを中心に5G実証実験を急ピッチで進めているが、今後は、5G本来の狙いである超低遅延URLLC、超多数同時接続mMTCを利用した、これまでに無い新たなサービスを想定した実証実験を行っていく見通しである。

本格的な5G導入を目前にして、どのようなサービスが実現されるのか、今後の国内モバイルキャリアを中心とした動きが注目される。

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