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解約違約金「1000円」総務省新ルール、その中身を解読する

総務省は6月21日、改正電気通信事業法の施行に伴い必要となる関係省令等の規定整備案を作成した。解約違約金1000円や端末の値引き上限2万円など大がかりな改正となる新ルールについて、公表された省令等をもとにQ&A式で解読を試みたい。

Q. 具体的にいつから新ルールが始まるのか。
A.
新ルールの開始日にあたる法律の施行日は政令で定められることとなっており、いまだ流動的だ。

ただし、締切は決まっている。改正電気通信事業法は6月17日に公布されたが、施行日は公布から6ヶ月以内と定められている。つまり、最長でも11月中旬には新たな法律が適用されることとなる。

夏から秋にかけて発売される新端末は現行ルールのままでもよいため、駆け込み的なキャンペーンも考えられるが、総務省は「施行前でも改正法の趣旨に反した競争をしないよう」釘を刺している。総務省は各社に7月、9月、12月の3回、状況を報告することを求める徹底ぶりで、この要請に抗うのは難しそうだ。

Q. 新ルールが開始したら、本当に1000円で通信会社を乗り換えられるのか。
A.
「違約金1000円」との衝撃的な文言からそのような印象を受けるが、大きく2つの観点から、答えは「1000円では乗り換えられない」と言える。

ひとつは違約金以外の手数料だ。1000円というのはあくまで契約途中に解約する場合の違約金の上限だ。乗り換え先の通信キャリアに対して「契約事務手数料」(おおむね3000円程度)を支払う必要がある。また、今使っている携帯番号を引き継ぐには「MNP転出手数料」もかかってしまう。

もうひとつは契約上の問題だ。法律が施行されたからといって、今の利用者の違約金が自動的に1000円に下がる訳ではない。通信会社側が「今の利用者に対しても違約金を1000円に値下げします」と言わない限り、新ルールに適合した(違約金が1000円に設定された)料金プランに移行する必要がありそうだ。

また、契約に自動更新が盛り込まれたプランの利用者はさらなる注意が必要だ。既存の契約(既往契約)については、今秋以降に更新日を迎えた場合であっても今の条件で更新してもよいとの特例が設けられた。

Q. 新ルールは、新規参入する楽天モバイルに有利だと言われているが。
A.
さきほど述べた通り、新ルールの施行直後に違約金1000円で乗り換えられる利用者はほとんどいない状況で、流動化が加速するかは未知数だ。実は楽天モバイル自身この点を理解しており、総務省研究会の議論において「政策効果が幅広く行き渡るよう、法施行後は既存プラン契約者の違約金も免除すべき」と主張していたほどだ。

また、今でこそどの通信会社であっても通信品質に大きな差はないが、一昔前は各社が通信速度やエリアでしのぎを削っていたことからも、高品質なネットワークを作り上げるにはそれなりの時間とコストがかかるものである。

立ち上げたばかりの楽天モバイルが品質やサービス面で利用者の期待に応えられなければ、せっかく乗り換えたユーザーがすぐ他社に移ってしまうことも考えられる。新ルールは同社にとって諸刃の剣だろう。

Q. 一部のMVNOは新ルールの対象外と聞きました。
A.
ユーザー数が100万以下のMVNOは、新ルールで定められた禁止行為(端末値引き、行きすぎた囲い込み等)の対象外となっている。ただし、抜け道をふさぐため、通信会社(MNO)の関連会社は一律で対象となった。以前整理したとおり、MNOの関連会社であるビッグローブやLINEモバイルなどが該当する。総務省告示案によれば、禁止行為の対象事業者は25社だ。
Q. 新ルールには問題も多いと思いますが。
A.
総務省が作成したのはあくまで「案」であり、現在はパブリックコメント(意見募集)の段階である。個人・法人を問わず、今月22日まで受け付けているので、問題があると感じている方はこの機会に意見を述べてみるのも一手だろう。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて7月5日に公開された記事となります。
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