グラフで比較するキャリア決算(1):

キャンペーンや新料金プランで市場が流動化し、解約率は3社揃って上昇

通信キャリア各社の2021年4~6月期決算が出揃った。そこで各社の主要数値をグラフ化し比較していく。初回は契約数と解約率に焦点を当てる。

契約純増数のトップはソフトバンクの37.0万増

2021年6月末時点における各社の累計契約数は、NTTドコモが8291.6万(前四半期比28.4万増)、KDDIが6056.7万(同16.9万増)、ソフトバンクが4765.5万(同37.0万増)となった。

四半期純増数でソフトバンクがトップとなるのは、少なくとも2014年以降では初めての記録となる。そんな同社だが、純増を牽引したのは「通信モジュール等」で、44.1万増となった。スマートフォンも25.1万増と好調だったが、スマートフォンに従来型携帯やタブレットなどを加えた「主要回線数」は1.3万増(うち「おうちのでんわ」が0.4万増)にとどまっている。

モジュールが契約数増を下支えする状況はNTTドコモも同様で、同社は通信モジュールが47.4万増だった。全体で28.4万増だったため、スマートフォンなどモジュール以外の契約数は19.0万減と計算できる。

KDDIは四半期ベースの通信モジュール契約数を開示していないため詳細は不明だが、パーソナルセグメントの「グループID数」が今四半期で12.5万減となっていることから、こちらも似たような傾向であると類推される。

楽天モバイルのキャンペーンや各社新料金プランの影響で市場の流動性高まる

続いて解約率について見ていこう。各社公表数値から、スマートフォンや従来型携帯電話に限った解約率(グラフの実線)を比較すると、NTTドコモが0.48%(前年同期比0.14ポイント増)、KDDIが0.83%(同0.39ポイント増)、ソフトバンクが1.01%(0.48ポイント増)と3社揃って上昇している。

解約率は、新年度を控えた4Q(1~3月期)にピークを迎え、次の1Qは減少することが多いが、今期の動きは例年と大きく異なる。

各社とも、自社内のブランド間でMNPをした場合(例えばソフトバンクからY!mobileへの乗り換え)は解約率の計算に含まれていないため、要因は別のところにある。

上昇の背景として、各社からは「前期4Qから4月にかけて楽天モバイルのキャンペーンもあり全般的に厳しかった」(KDDI)、「4月までは他社のキャンペーンがあった。獲得自体はできているが、流動性が高まっているため解約が増えている」(ソフトバンク)など、楽天モバイルの影響を挙げる声が多く聞かれた。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて掲載された記事となります。
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