IIJがトークイベントを開催(1):

格安SIMにおける音声通話の実態と通信品質ポリシーを説明

s20140422.JPG2014年4月、インターネットイニシアティブ(IIJ)が「IIJmio meeting #3」を大阪と東京で開催した。「IIJスタッフと一般ユーザーがざっくばらんにお話しする」イベントで、同社のエンジニアらによるトークセッションと、参加者からの質疑応答が行われた。

「モバイルビジネス通信」では、4月19日に東京で行われたイベントの模様を2回に分けてお伝えする。前編ではトークセッションに焦点を当てたい。

今回のイベントでは「音声通話サービス」「通信品質」「スピードテストの実態」の3つがトークテーマとなった。

「音声通話機能付きSIMカード」の実態

最初のセッションでは、宮本外英氏が「音声通話サービスのお話」と題し、音声通話の提供スキームなどを説明した。

会場の様子

先月から「IIJmio高速モバイル/Dサービス(以下、IIJmio)」にて音声通話機能付きSIMカード、通称「みおふぉん」の提供が開始されたが、パケット通信と音声通話ではサービスを提供するためのネットワーク構成が異なっている。

IIJmioは、MNOであるNTTドコモから設備を借りており、ネットワーク構成の中でIIJが管理する設備は直収パケット交換機など一部にとどまる。

モバイルネットワーク網構成における
IIJ設備とNTTドコモ設備

パケット通信の場合、3G/LTEに関わらず、最終的に同社の直収パケット交換機を経てインターネットに接続している。格安SIMで各社が多彩なサービスプランを提供できるのは、自社の設備で通信制御ができるためである。

モバイルネットワーク網構成
(3G端末のパケット通信)
モバイルネットワーク網構成
(LTE端末のパケット通信)

一方、回線交換方式で提供される音声通話においてはNTTドコモの設備のみが使われている。自社設備による独自の制御ができないため、音声通話の料金は基本的に各社横並びで30秒20円(税抜)となっている。

モバイルネットワーク網構成
(3G端末の通話・SMS通信)
モバイルネットワーク網構成
(LTE端末の通話・SMS通信)
IIJmioのポリシーは「高速通信=規制なし」「低速通信でも快適に」

続いて行われた佐々木太志氏のセッション「IIJmioの品質へのこだわり」では、通信帯域をもとに快適な通信を実現するための取り組みが説明された。

データ通信サービスは「キャリア内のネットワーク」「キャリアとMVNOの接続区間」「MVNO内のネットワーク」の品質に左右されるが、キャリア内のネットワークについてはMNO側で品質管理が行われており、MVNO側では直接的な対応は難しい。

つまり、MVNOにとっては「キャリアとMVNOの接続区間」「MVNO内のネットワーク」の2つがポイントとなる。

データ通信MVNOサービスの設備概要 快適にデータ通信を利用できるということ

IIJの場合、インターネットの黎明期から事業を展開し法人向けサービスにも強い特徴を活かし「MVNO内のネットワーク」については潤沢な設備を保有しているという。

「キャリアとMVNOの接続区間」については、接続を太くする(帯域を広げる)ことで品質は上がるが、帯域幅に応じてキャリアに対して接続料を支払う必要があり、どうしても費用対効果のバランスを取らざるを得ない。仮に帯域が不足してしまうと、混雑により通信品質の悪化及び通信速度の低下が起きてしまう。同社によれば、平日の12時から13時のあいだにトラヒックが集中する傾向にあるという。

キャリアとMVNO間の帯域が不足した場合

そこで、限られたリソースを振り分けるポリシーとして同社が挙げた基準が「高速通信時は規制なし」「低速通信時でも可能な限り快適に」の2つである。

低速通信時にも「3秒間は高速通信」が可能な仕様に

IIJmioのサービス開始当初、月額料金で利用できるのは低速通信のみで、高速通信はクーポンと呼ばれる追加料金を支払った場合に限られていた。

追加で料金を支払ってもらったにもかかわらず通信規制をかけるのはおかしいとの考えから、高速通信時は使いすぎによるペナルティなどは一切行っていないという。

現在は月額料金のみでも一定量の高速通信が可能になっているが、これもクーポンと同様通信規制の対象外となっている。

一方、低速通信においても快適に通信ができるよう、1回の通信について75KB(200kbps×3秒分)は速度制限の対象外となっている。

ウェブページへのアクセスを例に取ると、文章は高速通信で早めに表示され、画像などは低速通信で後から読み込まれるイメージだ。本文を読んでいるあいだに画像の読み込みが終われば利用者はそれほどストレスを感じずにネットが利用できる計算だ。

また、IIJで提供しているDNSサーバ、IIJmioのWebサーバ、IIJmioのメールサーバに対する通信は常に速度制限の対象外としている。

実際のところ、高速通信であっても低速通信であっても、やりとりするデータ量が同じであればIIJにとってのコストはあまり変わらないという。

ただし、単純に高速通信を解禁してしまうと、動画など大容量ファイルの送受信が行われ、ネットワークが長時間占有されてしまう可能性が高くなってしまう。そこで、ベースラインは低速通信としつつ、通信が短時間で終わるものに限って高速通信を可能にすることで、限られたリソースの中でも快適に利用できるよう運用を行っている。

(後編「IIJがトークイベントを開催(2):スピードテストの実態を解説、参加者からはVoLTEへの対応など質問が」に続く)

IIJ主催イベント『IIJmio meeting』取材記事