IIJ主催トークイベント『IIJmio meeting #2』:

「音声通話機能付与の予定は?」など、参加者から質問相次ぐ

2014年1月から2月にかけ、インターネットイニシアティブ(IIJ)が「IIJmio meeting #2」を大阪と東京で開催した。

2013年10月に行われた「IIJmio meeting #1」に続く2回目となる今回のイベントでは、前回に引き続き同社のエンジニアら3人が登壇しに関するトークセッションが行われた。その後の質疑応答では、サービス全般に関する様々な質問が投げかけられた。

既にIPv6対応となっているIIJmio、ただしスマホでのIPv6利用は現状困難

2月1日の東京会場では、まず、法人向けネットワークサービスの開発を担当する宮本 外英氏が「IIJmioとIPv6の話」と題し、IPv6の状況や提供スキームについての解説を行った。

インターネット上で通信相手を特定するための情報であるIPアドレスは、通信を行うにあたりすべての端末で唯一無二でなければならない。

32ビットで表現されるIPv4の場合、その総数は約43億に限られているため、インターネットの急速な普及にともなって現在は枯渇が問題となっている。その対策として、128ビットで表現され、事実上無限大であるIPv6への乗り換えが必要となる。

ただし、IPv4とIPv6には互換性がないため、接続する端末側にIPv4とIPv6の両方のプロトコルを使用する「デュアルスタック」機能を持たせるか、どこかでIPv4とIPv6の変換を行う必要があるという。

「IIJmio高速モバイル/Dサービス(以下、IIJmio)」では、LTEに対応していない3G対応端末の場合はIPv6接続はできないが、LTE対応端末の場合、LTEエリア・3GエリアのいずれにおいてもIPv6接続が可能になっていることが紹介された。IPv6の利用に際してオプション料金や利用申請などは不要であり、通常の契約を行えば自由に利用することができるという。

インフラ側での対応は完了しているが、スマートフォンで実際にIPv6を利用することは難しいという。実際に利用するにはAPNプロトコルの設定を行う必要があるが、現在発売されているLTE端末の多くは設定変更ができないようになっているとのことだ。

高速通信設定アプリ向けAPIの紹介や国内キャリアの周波数帯に関する説明も

続いて登壇したプロダクト推進部の堂前 清隆氏は、IIJmioで高速通信のオン・オフを行うためのアプリを安全かつ手軽に開発できるよう提供が開始された「みおぽんAPI」について、APIの機能などを解説した。

イベントの中では、「10分間・アプリクッキング」と題し、Chromeブラウザ上で高速通信のオン・オフが行えるアプリの実演開発も披露された。

最後に登壇した、IIJmioのサービス企画・運用を手掛ける佐々木 太志氏は、SIMフリー端末を利用する際に問題となる「技術基準適合証明(技適)」と、国内の各キャリアが利用している周波数帯(バンド)の関係について解説を行った。

なお、各セッションで用いられた資料は、同社のブログ「てくろぐ」内「IPv6・みおぽんAPI・技適/周波数 (IIJmio meeting #2 資料公開)」に掲載されている。

「音声通話機能付与の予定は?」など、参加者から質問相次ぐ

東京会場では30分以上にわたる質疑応答が行われ、技術面、サービス面など幅広い観点からの質問が投げかけられた。本稿の最後では、質疑応答の模様を取りまとめたい。

――IIJmioとして、独自のスマートフォン端末を発売することはありますか?

キャリアのように、各シーズンで端末ラインナップを発表することは困難である。仮に発売しようとすれば、IIJmioの規模を考えると、2年に1回ぐらいのペースが限界であり、それでは実際には購入いただけないだろう。「餅は餅屋」ではないが、我々はあくまで回線の提供に注力していきたい。

――音声通話の機能を付与することは考えていますか?

IIJは、1993年に国内初のインターネット接続サービスを開始するなど、データ通信事業を主力としており、データ通信インフラを使ったIP電話などを活用すればよいと考えている。
ただし、緊急通報や音声品質の観点から、回線交換による音声通話に対してニーズがあることは把握している。

――プリペイド型のサービス展開の予定はありますか?

2013年3月から、通信容量500MBが付与されたSIMカードを「IIJmioプリペイドパック」という名称で販売している。SIMカードを購入し、専用センターに電話で開通手続きを取ればすぐに通信が利用できるもので、通信容量を使い切るか、開通手続き日より3ヵ月後の月末までは利用が可能となっている。4,980円(税込)また、アップグレード手続きをとることで、SIMカードを継続して利用することもできる。

今後はプリペイドパックをより利用しやすくしていきたいと考えている。例えば、データ量を追加できるチャージカードを販売するといったサービスの拡張を検討している。

――今回のセッションでIPv6を取り上げた理由は?

IPv4のままではIPアドレスが枯渇してしまうことは明らかなので、IIJmioでの対応状況などについて説明申し上げた。

IIJとしては、10年後も20年後もネットを使い続けるためにはIPv6に取り組むのが当然だと認識しており、技術的に導入できるものについてはすべて導入している。当然の話だが、既に社内もIPv6環境を使っている。

海外でも、GoogleやFacebook、Bing、YahooなどのウェブサイトがIPv6に対応し、対応端末を使えばIPv6で接続できるようになっている。トークセッションでもお話したが、スマートフォン端末側の問題で対応が進んでいないのが現実である。

――総務省が「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」の改正案をとりまとめ、回線の接続料が引き下げられるとの報道もありますが、IIJmioの料金はどうなりますか。

2012年2月の個人向けサービス開始以降、高速通信ができるクーポンの増量や価格改定など、接続料の変動とは関係なく継続的にサービスの向上を行ってきた。料金体系は接続料に単純に連動して決めるものではなく、今後も品質やユーザーサポートなど含め総合的なサービス向上に努めていきたい。

――IIJmioではNTTドコモ回線のMVNOを行っているが、その他キャリアのMVNOサービスの提供予定はないのですか?

前提としてお伝えしたいのは、以前よりイー・モバイル回線を利用した「mio高速モバイル/EM」を提供しているので、NTTドコモ回線オンリーではない。

質問としてはau(KDDI)とソフトバンクモバイルへの対応という認識だが、各事業者間では常々お話はさせていただいている。ただし相手方があることであり、合意に達するまでは具体的な状況については差し控えたい。

――HLRの開放に関してはどのように考えていますか?

一般社団法人テレコムサービス協会のMVNO委員会が1月28日に「モバイルビジネス活性化に関する緊急提言」を行ったが、実はこの中でもHLR開放を盛り込むことが検討されていた。
開放することで、今までできなかった顧客サービスが実現できるようになるので期待しているが、実際のところMVNO業界内でも開放については温度差がある状況。

――クーポン非適用時の通信速度は200kbpsとなっているが、200kbpsにした理由は何ですか?

従来は最大128kbpsだったが、2013年4月より200kbpsに高速化した。速度を上げるにあたり当初は192kbpsを検討していたが、社内でもエンジニア以外からは不評だったので切りの良い200kbpsに設定した。

――「クーポン非適用時でも、通信開始直後の数秒だけは最大通信速度以上にスピードが出る」と言われていますが、真偽のほどはいかがでしょうか?

ご指摘の通りで、あえてそのような制御を行っている。クーポンがない低速の状態でも利用者が快適にアクセスできて、IIJとしてコスト面でのコントロールができる、そのバランスを取ったサービス内容である。これは、固定インターネットで培ったノウハウを移植している。

スピードテストで、最大通信速度以上の数値がでることがあるが、それもこの「当初数秒の高速部分」に引っ張られている部分がある。繰り返しになるが、数字云々よりも、実際の利用者に心地よく使ってもらえることが重要だと考えている。

――法人向けのプランはないのでしょうか?

まとめて購入いただくことで安価となるプランも用意しているので、是非弊社の営業にご相談いただきたい。

利用目的によって料金体系も異なっており、例えばM2Mのように通信量が多くない場合は、1回線あたりの価格を抑えたプランを提供できる。詳しい内容は、そう遠くないうちにプランを発表できると思う。
(編集部注:ワイヤレスM2Mを月額300円からの料金で提供する「IIJモバイルM2Mアクセスサービス」を2月17日より提供開始することを、2月5日に発表している)

IIJ主催イベント『IIJmio meeting』取材記事

[2014/2/26 16:50 追記]
当初、文中で一部「IJmio」と誤表記の箇所があり、修正いたしました。ここにお詫び申し上げます。
また、文中、一部リンクを追加しました。