IIJ主催イベント『IIJmio meeting #4』(2):

SIMロック解除やクーリングオフが今年議論されるワケ、MVNOへの影響も解説

インターネットイニシアティブ(IIJ)は8月2日にトークイベント「IIJmio meeting #4」を東京で開催した。その模様を前編に引き続きお伝えしていきたい。

後編では、佐々木氏による「MVNOと事業法を巡る最新動向」と、トークイベント後に行われた質疑応答の模様をお伝えする。

「MVNOと電気通信事業法を巡る最新動向」
SIMロック解除義務、クーリングオフがMVNOに与える影響を解説

最後に登壇した佐々木氏が掲げたトークテーマは「MVNOと事業法を巡る最新動向」だ。ここでいう事業法とは電気通信事業法を指している。

冒頭、クーリングオフやSIMロック解除などスマートフォン業界に関して総務省関連のニュースを整理した上で、なぜ今年に入って動きが加速しているのか、その背景として佐々木氏は2つの点を指摘した。

1つは平成23年の「光の道」構想を踏まえて改正された電気通信事業法の附則において、法律施行後3年を目途にして有効性や適正性などの検証を行うよう盛り込まれている点。もう1つが平成25年の「日本再興戦略」において「電気通信事業法等の具体的な制度見直し等の方向性について来年中に結論を得る」と記載されている点で、いずれも期限が今年となっていることから具体的な検討作業が進められている、との解説が行われた。

IIJ 佐々木氏 今年のスマートフォン業界のニュースの傾向
光の道構想 日本再興戦略と電気通信事業法
今年は電気通信事業法の見直しの年


電気通信事業法の見直し体制やスケジュール、見直しの検討ポイントの説明をはさみ、最後に事業法改正がMVNOに与える影響が取り上げられた。なお、これから紹介する影響に関しては、佐々木氏個人の担当者としての意見であると前置きされた上で話が進められた点をあらかじめ付け加えておきたい。

SIMロック解除の義務化について佐々木氏は、MVNO事業者が発売する端末ではもともとSIMロックフリーのものが大半のためマイナスの影響は少ないとの認識だという。ただし、通信方式の違いがあるため、例えばKDDIの端末にIIJmioのSIMをさした方から「音声通話ができない」とのクレームが寄せられる可能性も考えられる。利用者に対する丁寧な説明などMVNOに求められる課題は大きいとみている。

SIMロック解除の義務化 クーリングオフの導入
本人性確認と青少年保護


クーリングオフの導入については、契約への敷居が下がりこれまで以上に気軽に使えるようになるため歓迎の意向を示したが、キャリアメールが提供できないなどMNOとサービスレベルで差があることがマイナスに働く恐れもあると指摘した。

本人性確認・青少年保護については、IIJとしては以前より社会的責任を全うしており、今後も電気通信事業者として社会的責任の向上をはかっていくが、その中で契約・利用時に利用者にご不便をおかけする場合がありうるとの話があった。

佐々木氏 スライド資料
「端末ラインナップの拡充は?」「光回線とのセット販売は?」
参加者から多数の質問が寄せられる

イベントでは、トークセッションに続いて質疑応答の時間が設けられ、参加者から多数の質問が寄せられた。本稿の最後では、寄せられた質問内容と、質問に対する登壇者の回答をお伝えする。なお、トークセッションの合間に行われた質疑応答についてもあわせて取り上げている。

――VoLTEに対応したSIMフリー端末に「みおふぉん」をさせば、VoLTEの通話ができますか?

今回検証で用いた「Xperia Z2 SO-03F」をはじめとしたNTTドコモの端末であれば、NTTドコモ側でしっかりと検証が行われるので、NTTドコモのVoLTE通話は問題なく行えます。そのため、NTTドコモの回線を借りている「みおふぉん」でも通話ができました。

しかしSIMフリー端末の場合、ドコモ側で検証がなされずに発売される可能性もあり、VoLTE対応と謳っていてもNTTドコモのVoLTE通話が使えない可能性も否定できません。まだはじまったばかりのサービスでもあり、慎重にみたほうがよいのではないでしょうか。

――「おさいふケータイ」はなぜ使えなくなるのですか?

おさいふケータイでカードの発行や管理を行う際、キャリア経由での通信でないと受け付けないよう制限がかけられていると考えられます。あくまで「キャリアが提供するサービス」と捉えていただきたいです。

――キャリアメールのような使い勝手のメールサービスは提供されていますか?

IIJmioのオプションプランとして「IIJmioセーフティーメール」を提供していますが、もともとスマートフォン向けに作ったサービスではなく、キャリアメールのようなプッシュ機能はありません。社内でたびたび議論になっていますが、どうすべきか結論に至っていないのが正直なところです。

――「Ascend G6」や「LG G2 mini」などのSIMロックフリー端末をIIJとして個人向けに販売する可能性はありますか。

端末+SIMという、キャリアと同じビジネスモデルを取らない方が多様なサービス実現につながるのではないかと考えています。ただし、セットにしないと購入していただけない市場環境にあることも事実で、いろいろな選択肢を検討しています。IIJmioとしては現時点でセット販売は行っていませんが、子会社のhi-hoでは「LG G2 mini」とのセット販売を行っています。

――端末のラインナップは今後拡充する予定ですか。

スマートフォンについては、個別具体的なことは申し上げられませんが、国内・海外問わず、多くのメーカーからご提案をいただき、また相談をさせていただいるところもあります。

一方モバイルルーターに関しては、バリエーションを揃えるようなものではないので、時勢に沿ったスペックの機種を扱うのがよいのではないかと考えています。ルーターは個人利用より法人利用の方が需要があると見ており、どうしても法人向けの方が優先順位が高くなっているのが実情です。

――iPadでテザリングができなくなりましたが、その問題についてはどうお考えですか。

SIMロックフリーのiPad端末(技術基準適合認定のあるもの)は、従来テザリングが利用できましたが、キャリアプロファイルのアップデートを適用することで利用できなくなりました。現時点でも解決の目途はたっていません。

誰に責任があるのかは分かりませんが、もともと使えていたものが急に使えなくなってしまい、憤慨しています。電気通信事業法には「利用者の利益保護」「国民の利便の確保」が明文化されており、このような事態は法律の趣旨が踏みにじられたのではないかと捉えています。

――NTT東西が光回線の卸事業を開始する予定ですが、IIJmioとのセット販売は予定されていますか。

検討はしています。ただ、光回線も携帯回線も同一会社、となるとお客様からすれば完全に囲い込まれることになり、それがよいのかどうかという点もあります。また、キャリアと同じビジネスモデルになってしまうので、IIJmioらしいサービスとなるよう検討しています。

――MNPで乗り換える際、手続きが完了してからSIMカードが手元に届くまでのあいだは一時的に電話ができなくなりますが、これは解消されないのでしょうか。

MNP手続きで利用するNTTドコモのシステムに起因する問題で、NTTドコモとは継続的にお話をさせていただいていますが、現時点では解消は難しいです。

タイムラグを極力少なくするため、オンラインでMNPをされた場合は、SIMを発送する直前まで切り替え手続きを行わないようにしています。また、ビックカメラ有楽町店に設置した「BIC SIMカウンター powered by IIJ」では、MNP手続き当日中にSIMを発行する体制を整えており、タイムラグを感じずに乗り換えできるようにしています。

SIMを詳しく知らない人に対するPRの積極化がうかがえるイベントに

イベントの展示物には、玄人受けしそうな「Firefox OS 開発用端末 Flame」にまじって、IIJmioが大手一般紙に出稿した広告紙面も含まれていた。質疑応答の中で、一般紙のほか女性誌にも広告を出稿しているとの話があったほどだ(余談だが、某社のように著名芸能人を起用した大々的なTVCM展開は予算上難しいそうだ)。

トークセッションに初心者向けコーナーが新設されたこととあわせ、ネット上での露出ではリーチできない方々や、あまり詳しく知らない方に向けて同社がPRを積極化させていることがうかがえるイベントとなったと言えるだろう。

IIJ主催イベント『IIJmio meeting』取材記事

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[08/06 19:50 訂正]
当初、イベント開催日を「8月5日」としておりましたが、正しくは「8月2日」でした。
ここに訂正するとともに、お詫びいたします。(本文は修正済です)