IIJ主催イベント『IIJmio meeting #5』:

「MVNOだとGPSがうまく使えない」噂は本当か?の解説も

2014年10月、インターネットイニシアティブ(IIJ)が「IIJmio meeting #5」を大阪と東京で開催した。MVNOまわりの入門的な話から技術系のコアな話まで、IIJスタッフが直接解説するイベントで、同社のエンジニアやマーケターらによるトークセッションと、参加者からの質疑応答が行われた。

今回のイベントでは、初心者向けの「電話料金節約術」、マーケティング担当による「IIJmio利用者像」、技術スタッフによる「MVNOとGPSについて」の3つがトークテーマとなった。モバイルビジネス通信では、10月25日に行われた東京会場の模様をお届けする。

初心者向け「みおふぉん教室」では電話料金節約術を解説
「IIJmio利用者像」ではIIJmioの満足度調査結果などを披露

堂前氏による「みおふぉん教室」では冒頭、「キャリアメールがない」「LINEのID検索ができない」点とあわせて「電話料金の割引サービスがない」点を「IIJmio高速モバイル/D」(以下、IIJmio)の弱点として掲げた。

そのうち、電話(通話)料金は無料にしたり安価に済ませる方法があると説明した。具体的には、無料にするためにはLINE無料通話などの「無料通話アプリ」、安価にするには「楽天でんわ」「LaLa Call」などの専用アプリを用いるのがおすすめだという。

みおふぉん教室~前回のまとめ みおふぉん(IIJmio)の弱点

音質は、回線交換を用いる楽天でんわは通常の携帯通話と同等だが、IP電話の場合は遅延や途切れなどが発生する可能性がある。パケット通信はデータが届くまでの時間が安定しないため、アプリ側である程度データを蓄積してから再生する仕組みを採用しており、この「蓄積している時間」が遅延と感じられるという。また、音声の途切れが発生するのは、蓄積のためのタイムラグを上回るデータ遅延が起きた場合と指摘した。

通話料を安くするアプリ 通話に使う通信方式の違い

続いて登壇したのはイベント初参加となるマーケティング本部の今井氏。「IIJmioをご利用いただいている人はどんな人?」と題し、総務省及び調査会社による調査結果からMVNOの市場規模やIIJmioの評価を紹介した。

MMD研究所がIIJmio利用者に対して行った満足度調査をもとに、IIJmio初期費用やデータ容量が他の項目と比べて不満の回答が高い点だと読み解いた。ただし、即座に改善しにくいブランドイメージの項目で評価が高かったことはありがたく、今後も自社のサービス内容を見直すことで不満点を改善していきたいと話していた。

なお、今井氏によると、IIJmioは当初サービスの担当スタッフがマーケティングも行っていたが、全社的な取り組みへと移行すべく、約1年半前からマーケティング本部が担当になったという。

このセッションでは10月から提供開始となる訪日外国人向けプリペイドSIM「Japan Travel SIM」も紹介された。

IIJでは既にプリペイドSIM「プリペイドパック」が商品化されているが、開通手続きに発信者番号通知が可能な電話が必要で訪日外国人には使い勝手が悪く、専用商品が投入されることになったという。購入時に店頭で本人確認することで開通手続きが省略できるようになったそうだ。また、プリペイドパックと違い、利用期間(初回通信日から3ヶ月後の月末まで)の延長、月額プランのIIJmioへの移行は不可となっている。

IIJmioはどう思われている? 訪日外国人の方々にもご利用いただける
サービスをリリース
GPSによる位置情報取得プロセスから導き出された
MVNOですばやくGPS位置情報を取得するためのコツ

最後のセッションに登壇したのは、モバイルの端末挙動調査からコアネットワーク設備まで業務範囲が多岐にわたる、ネットワーク本部 ネットワークサービス部 技術開発課の大内氏。

テーマは「MVNOとGPSについて」で、GPSの技術解説と実機での動作状況を説明した。

大内氏によると、Android端末の場合、GPSは「無線LAN」「MNO基地局」「GPS衛星」の3つから位置情報を取得している。無線LANと基地局は位置情報取得までの時間が短いのが特長。ただし、無線LAN機能をオンにしたり、携帯回線契約を利用する必要がある。無線LAN、基地局ともに、Googleが収集した情報をもとに位置を判断する仕組みのため、MVNOでも利用できる。

とはいえ、正確な位置情報把握にはやはりGPS衛星からの情報が欠かせない。ただし、GPSは仕組み的に情報取得に時間がかかってしまうという。

GPS位置情報取得プロセス
No.情報取得プロセスかかる時間Cold StartWarm StartHot StartA-GPS
1端末がGPS衛星からの
信号をサーチし見つける


実施高速
処理
省略ネット
から提供
2衛星から信号に含まれる
ナビゲーションメッセージ
(GPS時刻、衛星の位置情報、補正情報)を得る
実施一部
省略
省略ネット
から提供
3衛星からの信号の到達時間を調べる

実施実施実施実施
4衛星の位置と信号の到達時間、
各種補正情報をもとに端末の位置を計算
実施実施実施実施
(出典:大内氏「MVNOとGPSについて」講演資料をもとにMCA作成)

GPSでは、上表にある4つのプロセスを経て端末の大体の位置を特定する。その後、衛星と端末の関係から最適なGPS衛星を割り出し、その衛星からの信号を利用して逐次位置情報を更新している。

プロセスの1と2の処理には時間がかかるが、一度処理を行えばその情報を再利用することが可能となる。「Cold Start」はGPS衛星に関する情報を何も持たない状態のためすべてのプロセスを行う必要があるが、2~3時間前に情報取得を行っている「Hot Start」状態であれば、1と2のプロセスを省略できる。「Warm Start」はCold StartとHot Startの中間に位置する状態だ。

時間のかかる1と2のプロセスを省略するもう1つの方法として「A-GPS」があり、これが「MVNOだとGPSがうまく使えない」と言われる主因にあたるものだ。

A-GPSは、GPS衛星経由ではなくIPネットワーク経由であらかじめ情報を提供し、Hot Startに近い状態を作り出す機能のこと。携帯回線経由からのみ取得できるSUPLと、無線LANからでも取得できるGPSチップメーカ実装に大別できる。メーカ実装の場合、アプリを用いてAPIを叩くことで利用できるとのこと。

多くの端末はメーカ実装とSUPLの両方に対応しているが、一部はSUPLにのみ対応しているという(Wi-Fiモデルはメーカ実装のもののみ)。また、SUPLは、提供元がキャリアとGoogleの2つあり、基本的にキャリア端末はキャリアサーバ、SIMフリー端末はGoogleサーバに接続するよう設定されている。端末別のA-GPS情報取得可否を整理したものが下の表だ。

端末+回線の組み合わせによるA-GPS情報取得の可否
A-GPSSUPLメーカ実装
キャリア提供Google提供GPSメーカ提供
キャリア端末+MNO回線×
キャリア端末+MVNO回線××
SIMフリー端末+回線(MNO/MVNO)×
Wi-Fi端末××
※△:端末が対応している場合のみ利用可能
(出典:大内氏「MVNOとGPSについて」講演資料をもとにMCA作成)

キャリア端末の場合、SUPLはキャリアサーバに接続されるよう設定されているため、MVNO回線では利用できない。メーカ実装については、端末の対応状況によって利用の可否が決まる。

SIMフリー端末の場合、SUPLはGoogleサーバに接続されるよう設定されているため、MNO・MVNOどちらの回線でも利用できる。メーカ実装についてはキャリア端末と同様である。

「MVNOだとGPSがうまく使えない」状況は、メーカ実装に非対応のキャリア端末にMVNOのSIMをさした場合に引き起こされる現象だと考えられる。今回のセッションではキャリア端末(SO-03D)を用いて情報取得時間の測定実験結果が披露されたが、SO-03Dはメーカ実装のA-GPSに対応しており、Cold Startでの情報取得に比べて時間が短縮できていた。

以上を踏まえ、端末に機能が搭載されている場合、MVNOであってもアプリを用いてメーカ実装のA-GPSを利用した高速化が可能だと結論付けた。

なお、iPhoneの場合、SUPLは利用せずメーカ実装のみ搭載していることから、MNO・MVNOともにA-GPSが利用できるようだとの解説もなされた。

Android端末での位置情報取得 GPSで位置情報を取得する手順
AndroidのA0GPSの実装-5 GPS位置情報取得のまとめ

IIJ主催イベント『IIJmio meeting』取材記事

関連キーワード(Mobile News検索