ケータイ市場の『影』についてのメディア論調

 天王山である2008年春商戦へ向け、ケータイ会社の料金競争はヒートアップする一方だ。ソフトバンクの攻勢とイーモバイルの音声参入に、KDDIとドコモが応戦するという構図が続いている。

 主戦場は、音声定額サービス。これまで、ウィルコムとソフトバンクモバイルのみだった自社内無料通話をKDDIとドコモも家族内、社員間という制限付きながら提供に踏み切った。

 それぞれ市場の3割、5割の母数を抱えるという点で、2割弱しかないソフトバンクモバイルとは影響のレベルが大きく異なる。もしかしたら、本当に通信がパンクするという事態がやってくるのではと思ってしまう。

 一方、視点をメディアの論調へと移すと、激しい純増競争が消耗戦を誘発させていることは既に各紙で述べられている通りである。こうした状況下において、一部メディアからは、あの会社が加入者を増やす手法はよくないとか、おかしいといったコメントが目立つ。

 しかし、個人的にはそんな性善説に立って書いていること自体に、妙な違和感を覚えてしまう。そもそもケータイは、古くはNCC系携帯会社の1台10万円のインセンティブを投下や、特定代理店がNCC市場の3割以上を占有するなどの歪み(影)を内包しながら急成長を遂げてきた市場なのだ。

 仮にケータイ市場が健全なら、業界に影響力を持つメディアが誕生していただろうし、 業界側もいわゆる専門誌と言われるメディアを育てようとしてきたはずである。果たしてケータイ市場について健全性という立場から論じることができ、かつ影響力のあるメディアがあるのだろうか?

 更に付け加えるなら、世界の最先端と言われる日本のケータイ市場が孤島というガラパゴス状態に陥らず、日本の端末ベンダーが世界で活躍することも夢ではなかったはずだ。

 誰もがおかしいと思いながら、しかし市場拡大を前に誰もブレーキをかけることができず、そして今にいたっている。別に影を受容しろと言っている訳ではないが、誠に請謁ながら今更ながらにあまりにもナイーブすぎる気がしないでもない。