通信業界で起きる中国脅威論

 AM:ある機器ベンダーとの定例ミーティングにて。

 世界を席巻する中国パワー。ことは通信市場においても同じである。

 成長著しい新興国を中心に携帯電話向けインフラ市場は言うに及ばず、携帯端末では今やグローバル端末ベンダーの一角を占めるポジションにまで急上昇してきている。

 国内マーケットにおいても、インフラではHUWEIがイーモバイルに、そしてソフトバンクには実験用だがLTE向けに機器を提供し、UQCが提供しているモバイルWiMAX向けではZTEかそれぞれ導入を果たしている。

 また、端末では流行っているWi-Fiルータやデータ通信カードのほか、最近ではスマートフォンにまてウィングを広げてきている。

 これまで、中国企業は日本に参入を果たしたものの、イーモバイルなど新興キャリアが主要顧客で、そういう意味ではまだ亜流の存在でしかなかった。

 しかし、今年に入り端末の一部とは言え国内通信業界の本流であるドコモとKDDIで端末が採用されたという事実は注目に値する。

 ところで、関係者に話しを聞くと、中国企業の商談スタイルはユニークらしい。日本では機器ベンダーはキャリアに採用してもらう為に、立場的には下手になり商談を進めていく。しかし、中国企業は「何故、こんな優秀な製品を購入しないのか」というスタンスで臨むのだという。そして、できる見込みがないことでも平気で「やれます」と返事するものだから、中国企業の日本人スタッフは慌てるケースが多いという。

 中国企業の機器や端末を採用したキャリアの担当によると、品質に対する考え方が全然違うことから国内企業と比べてやり取りは倍以上の苦労を強いられるとするものの、着実に日本へ根を張ろうとしている。

 最近、インドや米国では中国脅威論のなか、通信機器購入に際し政府からキャリアへ中国企業の製品を採用しないよう働きかけがなされているとされる。

 国家のライフラインとして位置づけられる通信サービスだけに、導入にあたってはコストだけでなく、国家防衛や機密保持の観点も大切になるということだろう。

 いずれにしても2011年以降、世界そして国内通信市場において中国通信企業の存在感が増すことだけは間違いなさそうだ。