キャリア各社のLTEエリア展開について

 日経BPコンサルティングやMMD研究所、ICT総研などが「iPhone」におけるキャリア各社のLTEサービスの調査を実施している。各社の調査結果はまちまちであるが、都心部ではKDDI(au)やソフトバンクモバイルが強く、地方部ではNTTドコモが強いという印象を受ける。さらにNTTドコモのLTEサービスは実効速度が遅く、エリアも際立って広くないという結果もみられる。

 総じて、他キャリアよりも先行的にLTEサービスを開始していたNTTドコモが、必ずしもトップではないということが伺える。調査方法やエリア設定にバラツキがあり、一概に優劣を図ることができないため、今回はキャリア各社のLTEエリア展開などを考えてみたい。

プラチナバンドの800MHz帯をアピールするau
 KDDI(au)のLTEサービスは当初、iOS(iPhone 5)向けの2.1GHz帯、Android向けの800M/1.5GHz帯という位置付けになっていた。本来、KDDIはLTEサービスのメインバンドに800MHz帯を据えていたため、2.1GHz帯LTEが他キャリアに比べて弱い面がある。

 しかし、「iPhone 5s/5c」が800MHz帯LTEに対応したことにより、iOS(iPhone 5s/5c)向けLTEサービスもエリアが強化された。すでにKDDI(au)の800MHz帯LTEはAndroidユーザに好評を得ており、それがiOS(iPhone 5s/5c)向けでも利用できるのは朗報といえる。

SBグループは利用可能な帯域幅が少ないものの好成績
 ソフトバンクモバイルは2.1GHz帯でのみLTEサービスを展開し、グループ会社であるイー・アクセス(イー・モバイル)の1.7GHz帯LTEで補完する形になっている。現時点で他キャリアに比べ、LTEサービスへの割当可能な帯域幅が少ないが、調査結果では好成績を獲得し、ポイントを絞ったLTEエリア展開が奏功しているものとみられる。

 しかし、今後も帯域幅の急拡大が見込めず、利用可能な周波数帯に関しては苦しい戦いが続く。

 余談になるが、私はソフトバンクモバイルの3Gスマートフォンを利用している。通勤時の中央線、総武線では現在も通信が途切れることが多く、正直、ソフトバンクモバイルのLTEエリアやスピードテストの結果には驚きを隠せない。現在もLTEサービスなどには対応していないため、次回機種変更時の「Hybrid 4G LTE」対応には非常に期待している。

2014年春に他キャリアを凌ぐLTEネットワークを提供するドコモ
 最後にNTTドコモに関して、これまでは徐々にLTEエリア展開を図り、年度ごとに一定の基地局を置局していくイメージであった。しかし、KDDI(au)とソフトバンクモバイルのLTEエリア展開は開始初年度に一気に構築するロケットスタートになった。

 この点が調査結果におけるNTTドコモの成績に大きく影響しているのではないだろうか。NTTドコモとしては、従来どおりのエリア展開計画でLTEサービスの提供を考えていたが、他キャリアの予想外に迅速なエリア拡大に遭遇してしまった感がある。

 その結果、高トラフィックエリアを中心にLTE展開してきたNTTドコモと、早期的な全国エリア化を図った他キャリアと差が出てしまった。実効速度に関しては、LTEユーザ数の多寡が大きく影響しているものと考えられ、国内で最もLTEユーザ数の多いNTTドコモは苦戦している。

 ただ、現状に対し、NTTドコモも足踏みしている訳ではなく、2013年度は当初計画を前倒ししてLTE基地局数を倍増させる。さらに高速化に関しても、1.7G/1.5GHz帯の運用を本格化させて速度向上を図る。2014年春には他キャリアを凌ぐLTEネットワークを提供する方針で、今後のNTTドコモの反撃に注目したい。