Googleの「Project Ara」も追い風に:

MVNOのポテンシャル「考」

携帯電話の未来を考える時、これまでは携帯会社が何を考えているかを探れば、おおよそ知ることができた。

しかし、現在は端末ではGoogleやApple、ネットワークではMVNO、プラットフォームではGoogleやLINEというように、多様なプレーヤーが各レイヤーで台頭し、携帯会社は「One Of Them」に過ぎなくなってしまった。

こうした状況は、5月からのSIMロック解除などにより益々加速していくことだろう。MNP(Mobile Number Portability)がそうだったように、導入されてもすぐには変化はないかも知れないが、制度化されるということは、そのレールの上で競争が繰り広げられる訳で、インパクトは決して小さくないと考えるべきではないか。

年初ということもあり、周りの方に今年のトレンドについて聞かれる機会がある。光の卸や先に述べたSIMロック解除は既に見えているイベントだが、他に個人的に注目しているのが、Googleが2014年4月に発表した「Project Ara」である。

これは、レゴブロックみたいにメモリーや電池、センサーなどの部品をモジュール化し、自分好みのスマホを組み立てるというものだ。つまり、これまで端末ベンダーや携帯会社が定義してきた端末(機能)の選択権が利用者に移ることで、携帯電話の生態系に大きな変化を及ぼす一歩となるだろう。

1月には開発者向けイベント(Developers Conference)が開催され、開発が進む「Project Ara」
(画像はProject Ara公式サイトより。出典:Google Inc.)

15年くらい前の「iモード」が出始めの頃、携帯電話のカタチや機能がどのように進化するかということについて、あるグローバルベンダーの端末担当者と定期的に意見交換する機会があった。私は、携帯電話にテレビや決済、定期券といった多機能化へ向かうと言ったのだが、その方は通信機能だけを載せたシンクライアント化へ向かうのではないかと話をされていた。

空っぽの端末に、自分が必要とする機能をネットからダウンロードし、TPOに応じて使うような世界になるというもので、まさにそれに近いことが起きようとしている。ちなみにProject Ara端末の発売は2015年で、価格は1万円以下とされている。

こうした動きは、MVNOにとって間違いなく追い風となるだろう。MVNOについては、その騒がれ方に対して契約者数が少ない。だから、今後は厳しいのではという意見を聞くことがある。

しかし、私はそうは思わない。現在のMVNOは、ポテンシャルの半分以上も出していないのではないかと考えているからだ。現在、MVNO各社は、一部を除けばほとんどがNTTドコモの回線を借りて事業を展開しているが、近い将来、他の携帯会社からも回線を調達するようになるだろう。

つまり、MVNOのマルチキャリア化の動きだ。そうなった時にはじめて、MVNOは携帯会社と異なるサービスやビジネスモデルが生まれてくるのではないか。具体的には、携帯会社と契約している利用者は、当然だがその携帯会社が提供している周波数のサービスしか受けることができない。しかし、複数の携帯会社から回線を調達したMVNOの利用者は、3社の携帯会社のなかで、利用者の条件(コストやスピード優先など)の合ったものを自動的に選別して提供してくれる。そんな世界がもうすぐ到来するのではないかと考えおり、Project Araは最適な端末の1つとなるのではないだろうか。

MVNOのポテンシャルは決して低くない。

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