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「SIMロック解除は販売後数カ月で可能へ」~総務省 富岡氏がMVNO政策について講演

2015年1月、インターネットイニシアティブ(IIJ)が「IIJmio meeting #6」を大阪と東京で開催した。IIJの担当者からはSIMフリースマホの選び方、IIJmioの通信品質の考え方・取り組みが紹介されるとともに、ゲストスピーカーとして総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 事業政策課 企画官の富岡秀夫氏も登壇した。

そこで今回は、東京会場での富岡氏の講演内容から、総務省のMVNOへの取り組みについて取り上げてみたい。

総務省の富岡秀夫氏
寡占的なモバイル市場で競争を活性化させるためにMVNOを後押し

富岡氏の講演テーマは「加速するMVNO政策」。総務省がMVNO政策を推進する理由と、新たなMVNO政策の2点が内容の中心となった。

MVNO政策を推進する理由として挙げたのが、現状のモバイル市場の状況だ。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3グループ体制で「多様なサービス・料金プランが提供されるのが本来の姿だが、3社の価格体系は横並びで、キャッシュバック金額の多さを競っている」寡占的な状況になっていると富岡氏は指摘した。

寡占状況の解消には新たな事業者を参入させる方法が挙げられるが、電波には限りがあるため携帯電話会社を増やすのは容易ではない。そこで、インフラを借りてサービスを提供するMVNOを増やし、現状の3グループと同じく競争できる環境を生み出すべく、MVNO政策を推進しているという。そのための新たな政策として、富岡氏からは3点が紹介された。

総務省による新たなMVNO政策は主に3点

1点目は「SIMロックの解除」。MVNOへの乗り換えコストを下げるとともに、MVNOで利用できる端末数を増やす狙いがある。

総務省は既に2010年6月に「SIMロック解除ガイドライン」を策定したが、「義務を課したわけではない」(富岡氏)こともあり、SIMロック解除可能な端末は全体の半数程度にとどまった。

SIMロック解除可能な端末(出典:総務省 富岡氏の講演資料より)

これを踏まえ、2014年12月の改正では「正当でない理由でロック解除に応じない場合は罰(業務改善命令)を与える」(富岡氏)ことを明示した。対象は2015年5月1日以降に新たに発売される端末で、具体的にはフィーチャーフォン、スマートフォン、タブレット、モバイルルーターおよびUSBモデムが挙げられる。一方でM2MやIoT関連の端末は対象外となっている。

なお、SIMロックをかけて販売すること自体は禁じていない。これは、端末を入手してすぐに転売するような契約を防止するためのもので、販売から一定期間は解除に応じないことも問題にはならない。富岡氏によれば「一定の期間を2年間にするのは当然ダメで、せいぜい数カ月間という認識を持っている」とのことで、現在各社と話し合っており5月までにはアナウンスされるという。

2点目は「MVNOへのネットワーク開放のさらなる促進」。

MVNOが携帯電話会社(MNO)からネットワークを借りる方法には卸電気通信役務と事業者間接続の2つがあり、既に事業者間接続について、MNOはMVNOによる貸与の請求に応じる義務が課されている。

しかし、ネットワークの必要な部分のみを利用できるようにするアンバンドルについては拘束力のないガイドラインにとどまっている。また、事業者間接続においても手続きが法令で規定されておらず「交渉がだらだらと伸ばされる」(富岡氏)事態も想定される。

総務省では、基本的な機能のアンバンドルおよび手続きの迅速性を担保するため、今国会で電気通信事業法の改正案を提出する予定となっている。富岡氏によれば「内容の方向性はある程度固まっている」段階だという。

3点目は「訪日外国人の国内発行SIMへの差替え円滑化」。MVNOのSIMを利用する機会を増やす狙いがある。

日本を訪れる外国人が携帯電話を使う手段として既に国際ローミングが提供されているが、価格面がネックで気兼ねなく使うことが難しい。一方、MVNOについては、海外では空港の売店や自販機で販売されているが国内での取り組みはまだまだ限定的だ。また、利用開始手続きが煩雑との指摘もある。

これら課題の改善に向けては、テレコムサービス協会のMVNO委員会を中心に議論が行われている。

もう1つの課題が、海外から持ち込まれる端末の扱いだ。いわゆる「技適マーク」のない端末は、国内での技術基準を満たすか確認が取れていないため現在国内で利用することはできないが、訪日外国人の利便性を損なっているのも事実だ。

富岡氏は「海外から一時的に持ち込まれる(技適マークのない)端末も国内で使えるよう電波法を改正していく。どのような端末を可能とするかは検討中」と述べた。アメリカのFCC認証を受けていればよいのではないかとの参加者からの指摘に対し「それも1つのラインである」と答えており、諸外国の認証を受けている端末を中心に解禁が検討されているとみられる。

「MVNO1500万契約」に向け、新たな政策でも解決できない課題への取り組みに期待

富岡氏の講演により、総務省として積極的にMVNO市場を拡大させようと様々な政策が推し進められていることが分かった反面、その限界も浮き上がった。

SIMロック解除では、端末の周波数帯対応をどうするかは現時点でも「携帯電話会社と総務省で話をしている段階」(富岡氏)だという。現状は自社の周波数帯に最適化されて発売されることがほとんどだが、MVNOや他の携帯電話会社へ乗り換えても問題なく使えるようにするには、できるだけ多くの周波数帯に対応させるのが理想的だ。

富岡氏によれば「対応している周波数帯をユーザーに分かりやすく示すこと」は決まっているものの、それ以上の部分は未定だという。

海外端末の国内利用では、イベント終了後に一部で「海外端末を輸入して日本で使えるようになる」といった期待感が生まれたが、あくまで「訪日外国人が一時的に国内に持ち込む」場合に技適がなくても利用できる方向での解禁にとどまっている。日本人が継続的に国内で利用する端末については、当面は従来通り技適のない端末は利用不可となるとみられる。

今国会で提出が予定されている電気通信事業法および電波法の改正案でも解決が難しいこれら課題に対しどのような取り組みがなされるのだろうか。総務省は「モバイル創生プラン」の中で2016年のMVNO契約数を1500万まで拡大(2014年9月末で約840万契約)する目標を掲げており、今後の動きにも期待していきたい。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて2月6日に公開された記事となります。
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