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基地局向け部材ベンダーの動向と行方

前回、無線機ベンダーの動向に関し、現状と今後をまとめたが、今回は基地局向けアンテナやケーブル、電源、蓄電池といった附帯設備、いわゆる部材ベンダーの動向をまとめてみたい。

部材も無線機と同様に、需要や調達規模はキャリア各社の基地局計画に大きく左右される。大手3社の特徴としては、年度単位の計画を策定するNTTドコモとKDDI(au)、プロジェクト単位で動くソフトバンクモバイルに分けることができる。

元々、調達規模の大きいNTTドコモは別としても、ソフトバンクモバイルによるプロジェクト単位での発注は調達規模が大型化する傾向がある。ただ、現在は設備投資額を抑制する傾向にあり、その影響を受け、調達規模が減少するなど波は激しい。

ベンダーシェアに関しては、シェア変動の少ないNTTドコモとKDDI(au)、シェア変動が大きいソフトバンクモバイルという傾向がある。これも複数社からの安定的な供給を望むNTTドコモとKDDI(au)に対し、プロジェクト単位で単独受注もあり得るソフトバンクモバイルとの違いが考えられる。

次に部材ベンダーの動向をまとめてみたい。

新周波数帯やMIMOに注目するアンテナベンダー

アンテナに関しては、マルチバンド化が進み、ベンダー各社とも対応製品の供給が進む。NTTドコモは主に5波(700M/800M/1.5G/1.7G/2.1GHz帯)、KDDI(au)が4波(700M/800M/1.5G/2.1GHz帯)になっている。

需要性に関しては、キャリア各社の新周波数帯運用において、全国/地域での展開、CAの組み合わせによって需要が大幅に変化する。また、今後は3.5GHz帯への対応やMIMOの動向次第でアンテナ需要が左右される見込みである。基地局向けアンテナベンダー大手は日本電業工作や電気興業、日立金属で、3社ともUQコミュニケーションズを含む4社にアンテナを供給している。

アンテナ需要に牽引される基地局向けケーブル

ケーブルは主に同軸ケーブルを対象としており、現在の主流は銅ケーブルになっている。アルミは銅ケーブルよりも安価ということもあり、ソフトバンクモバイルなどでの採用が進む。一方、NTTドコモとKDDI(au)はアルミケーブルの採用には消極的で、銅ケーブルの調達にとどまっている。エンジニアリング会社にとって、銅ケーブルはアルミよりも施工しやすいという声もあり、それらの声に配慮した格好といえるかもしれない。

需要性に関しては、アンテナ需要と並行し、ケーブル需要も存在している。ベンダーに限らず、アンテナが多く供給されれば、ケーブルも多く供給される傾向にある。基地局向けケーブルベンダー大手は三菱電線工業やコムスコープ・ジャパン、日立金属となっている。

今後の需要性に乏しい電源

電源は新局工事の際に必要とされる附帯設備であり、3G時代に基地局の全国展開が進み、併設工事にシフトしたLTE時代には新たな需要が発生しにくい状況になっている。

通話機能がメインとなる3G基地局には総務省も電源設置を義務付けていたが、すでに通話よりもデータ通信ニーズが高まっており、今後の需要性に不安が残る。基地局向け電源ベンダー大手は新電元工業やサンケン電気、オリジン電気となっている。

新設や併設工事の影響を受けない蓄電池ニーズ

蓄電池は過去の震災を受け、キャリア各社によるバッテリーの長時間化が進められた。その施策も2013年度には終息している。現在の蓄電池の主流は鉛であるが、マンションなど耐荷重面から鉛よりもリチウムイオン電池を採用するケースも一部あるという。

需要性に関しては、アンテナや電源と異なり、新設や併設工事の影響を受けず、常にニーズが存在する。そのためキャリアの施策次第で、今後の需要性が大きく左右される。パナソニックによる基地局向け蓄電池参入という話も聞かれたが、基地局向け蓄電池ベンダー大手はGSユアサや新神戸電機(日立化成)、古河電池となっている。

基地局向けアンテナやケーブル、電源、蓄電池ベンダによる供給状況
(出典:株式会社MCA)
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて4月10日に公開された記事となります。
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