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パナソニック、Nokiaへの基地局関連事業を売却報道で透ける市場構図の変化

パナソニックとNokiaが2014年7月に、Nokiaへのパナソニック システムネットワークス(PSN)の基地局関連事業売却で大筋合意したと報道された。Nokiaは世界的なインフラベンダのノキアソリューションズ&ネットワークス(NSN)を傘下に持っており、売却額は数十億円規模とみられる。

パナソニックによるPSNの基地局関連事業売却は、今後の国内基地局市場にどのような影響を与えるのか。そこで今回はPSNの動きや市場への影響、今後の展望について俯瞰していきたい。

PSNの基地局関連事業はNECや富士通に次ぐ国内ベンダ第3位の位置にあり、もともとNTTドコモ向け3G基地局では3強の一角を占めていた。しかし、直近ではシェアを落として3強の座から落ちている。その背景には、LTE基地局において、KDDI(au)やソフトバンクモバイルに基地局を供給しているNSNやエリクソン・ジャパンなど海外ベンダによる攻勢の影響を受けたためである。

また、PSNはNSNと2007年から提携関係にあったが、初期段階で開発したLTE基地局がNECや富士通に比べ大型であったこと、小型機を開発するまでに時間がかかったことなどもシェア減少の一因とされている。

無線機ベンダシェア(2013年度見込み)
(出典:MCA「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測 2014年版」)


2013年度見込みでは金額ベースで、PSNの国内シェアは約8.5%、NSNは25.8%のシェアを獲得した。最大手のNSNへPSNのシェアを合算することでNSNのシェアは34.3%にまで高まり、第2位のNEC(18.4%)を大きく引き離す。

NSNは現在、大手キャリア3社への供給を行っており、今後はNTTドコモへの展開に拍車がかかる一方で、KDDI(au)向けではサムスン電子ジャパンやエリクソン・ジャパンとの争いが激化しており、短期的にはシュリンクする可能性もある。

このように携帯基地局市場は、LTEなど国際標準規格の普及とともに、国内ベンダーがリードする時代が終わり、マルチキャリア化を果たしたNSNやエリクソン・ジャパンなどグローバルベンダー同士による戦いへとシフトしつつある。そして、今回の報道は、グローバル展開で遅れた国内ベンダの生き残り策という課題をも突きつけているのではないだろうか。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて7月25日に公開された記事となります。
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[9/17 14:49 訂正とお詫び]
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