週刊モバイルビジネス通信(4/7~4/14):

IIJイベントに登壇した総務省担当者が語る「MVNOを巡る今後の総務省の取組の方向性」

4月15日、インターネットイニシアティブ(IIJ)がトークイベント「IIJmio meeting 15」を開催した。これまで四半期に一度、同社の担当者が一般の利用者に対して話題のトピックを伝えてきたが、今回は総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 料金サービス課 企画官の内藤新一氏も登壇した。

内藤氏の講演テーマは「MVNOのなぜなにと総務省」。MVNOに関する疑問として「なぜ安いのか」「通信品質はキャリアと同じなのか」「なぜドコモ系ばかりなのか」「ドコモ以外のキャリア端末はなぜMVNOでそのまま使えないのか」の4点を取り上げ、総務省が果たす役割も踏まえて背景を解説した。

総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 料金サービス課 企画官 内藤新一氏

注目すべきは、総務省の担当者がMVNOの通信品質について触れた点だろう。内藤氏は音声通話とデータに分けて品質について説明した。

まず音声通話はMNOのネットワークをそのまま使っているので同等だが、050(IP電話)はインターネット電話、00XY(中継電話)は他の通信事業者を経由するので音質に違いが生じると説明した。

データ通信は、MNOのネットワークとMVNOの設備をつなぐ部分の契約容量に左右されるため、実際のトラフィック量が契約容量を超えると遅くなってしまうという。内藤氏は「MVNOを使っていると朝やお昼の時間帯にスピードが遅くなる経験をされた方も多いだろう」との認識を示し「(契約)容量を大きくすれば速度は改善するが、MNOに借り賃を多く払わなければならない構造になっている。どれぐらい借りているのかによってサービス面、ビジネス面のバランスをとって経営をしている」と指摘した。

この前段で内藤氏は、MVNOの料金が安い理由を参入事業者の多さによる熾烈な競争の結果と語っていたが、低価格を実現するための肝の部分は「限られたネットワーク容量に利用者を詰め込んでいる」構造に他ならない。

事業者の運営方針によって巧拙が出るため通信品質は競争軸の大きなウェイトを占めるはずだが、店舗網や宣伝などマーケティング力に左右されるのが現状だ。ただ「MVNOでもスピードがひとつ消費者の関心にもなってくるので、これをどうやって計測するかについては今後我々も検討していきたい」(内藤氏)と話しており、今後改めて品質にも焦点が当たりそうだ。

一方、MVNOを巡る今後の取組の方向性に関しては、キャリアによるサブブランドを念頭に「もともとは大手3グループで競争があまり進まないからMVNOの参入を促していたが、MVNOを含めたグループ化が進んでしまうと結局はMNO3社の寡占的な状況に戻ってしまう。グループ化が進まないように注視していきたい」(内藤氏)とも語っている。また、一部のMVNOに消費者保護ルールへの対応が十分でないところが見受けられるので、モニタリングを通じて不備があれば改善を個別に促す点も挙げられた。公正な競争環境をどのように維持していくのか、今後の取組にも注目していきたい。

MVNOの通信の品質は、大手携帯電話事業者と同じなの?
MVNOを巡る今後の総務省の取組の方向性
※登壇時の資料はIIJ「てくろぐ」内にて公開されている
【「IIJmio meeting 15」関連記事】
【今週号の目次】
週間ニュースダイジェスト
4/7(Fri)
  • AbemaTVが「AbemaTV」内で有料サービス「Abemaビデオ」の提供を開始。月960円。「プレミアムプラン」のタイムシフト機能を拡充し、AbemaTVの番組を一定期間いつでも見放題に。オリジナル制作番組も投入へ。
    - https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/press/detail/id=13573
4/10(Mon)
  • エキサイト、MVNO「エキサイトモバイル」の大容量プラン月額料金を4月分より値下げ。20GBは4750円→3980円、50GBは13800円→10180円など。あわせて新規契約手数料0円、スマホ2機種値引きを4月17日~5月31日まで実施へ。
    - http://corp.excite.co.jp/press/excitemobile20170410/
  • IDC Japanが国内IoT向けITサービス市場予測を発表。2016年は96.9%増の548億円。2021年には6670億円市場に成長と予測。
    - http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/201704102Apr.html
4/12(Wed)
  • ASUS JAPAN、「ZenFone 3 Max (ZC520TL)」の基本性能を向上した「ZenFone 3 Max (ZC553KL)」を4月15日より発売開始。画面サイズが5.2インチから5.5インチに、メモリが2GBから3GBに増量、au VoLTE対応などスペックを強化。
    - https://www.asus.com/jp/News/Ra1nnIMHvpqhUfYP
  • インテル、関西電力らが家庭向け宅内IoTプラットフォーム実証実験を4月より開始と発表。関西地区の100戸に環境センサーを設置し収集した宅内データの活用方法等を検証。
    - https://newsroom.intel.co.jp/news-releases/intel-is-making-household-oriented-iot-service-platforms-a-reality/
  • ソースネクスト、留守番電話を自動テキスト化する「スマート留守電」の機能を向上。英語・中国語など主要10言語に対応。留守番通知をFacebook「Messenger」で受信可能に。
    - http://sourcenext.co.jp/pressrelease_html/JS/2017/2017041201/
  • ハタプロと長野県大町市、積雪時の水道施設管理を目的としたLoRaWAN実験結果を発表。ハタプロとNTTドコモが共同展開する39Meisterが開発したシステムを用いて、積雪時にも通信が可能であることを確認。
    - http://hatapro.co.jp/news/17041239meister/
  • 楽天、MVNO「楽天モバイル」の一部店舗で「絶対勝てない!? AIじゃんけんにEndless Challengeキャンペーン」を開始。人間の手の動きを画像認識し対戦するAIじゃんけんマシーンと勝負し勝った場合、1年間基本料が無料に。挑戦すればもれなくチョコレートをプレゼント。
    - https://corp.rakuten.co.jp/news/update/2017/0412_01.html
4/13(Thu)
  • 国民生活センター、格安スマホに関するトラブルが増加していると注意喚起。16年度の相談件数は1045件で前年度比約2.8倍に。「問合電話窓口がつながりにくい」「メールアドレスの提供がない」など。
    - http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170413_1.html
  • キリンビバレッジバリューベンダーとLINEが自販機コミュニケーションサービス「Tappiness(タピネス)」を首都圏・近畿圏で開始。Bluetooth発信器(ビーコン)を自販機に設置。LINEをかざして商品を購入するとポイントを付与(15ポイントでドリンク1本無料)、LINE Payでの決済も可能に。開始1年で2万台に導入予定。
    - http://www.kirin.co.jp/company/news/2017/0413_01.html
  • ASUS JAPAN、AR技術「Tango」とモバイルVRプラットフォーム「Daydream」の両方に対応したSIMフリースマホ「ZenFone AR(ZS571KL)」2機種を今夏発売と発表。
    - https://www.asus.com/jp/News/ydE74tR5o9xZ1nSv
  • DMM.com、MVNO「DMM mobile」のシェアプラン適用範囲を拡大。従来8GBプラン以上でのみ提供していたが、1GB~7GBプランでもシェア可能に。1~7GBまでの場合、SIM1枚ごとに300円の追加利用料が必要。
    - https://dmm-corp.com/press/press-release/7720
  • プラスワン・マーケティング、MVNO「FREETEL」販売店「フリーテルショップ」新店舗を練馬区、世田谷区、足立区など都内に開店。4月11日から14日にかけ8ヶ所に新設。全国20店舗に。
    - https://blg.freetel.jp/news/18982.html
4/14(Fri)
今週の注目記事
  • ソフトバンクSIMの提供は? Y!mobileとUQは脅威? mineo×IIJmioトークセッション(ITmedia
  • Y.U-mobileが「ヤマダニューモバイル」を始める狙い、ソフトバンクSIMの勝算(ITmedia
  • トリニティ星川社長が語る「NuAns NEO [Reloaded]」 Android採用の理由、おサイフケータイ搭載の苦労(ITmedia
  • 国内メーカーのスマホ出荷、2月は101万台(ケータイWatch
  • SIMフリースマホで最注目の存在! ファーウェイ製品の魅力の秘密をトップに聞いた(ASCII.jp
  • ドコモが健康経営攻略に本腰、「短期間で効果」売りに目指す100億円(ITpro
  • ポストスマホは「音声」が主役--LINE出澤剛×舛田淳の勝算(CNET Japan
  • AIベンチャーの雄が総務省の開発指針に反対する理由(ITpro
  • Skypeにリアルタイム翻訳機能が追加、将来のビジネス活用にも期待(ビジネスネットワーク.jp
  • 「熊本地震における情報通信の在り方に関する調査結果」を公表(総務省
通信キャリア 今週の主な報道発表
4/11(Tue)
  • ドコモ・ヘルスケア、新たな法人向け3サービスを4月以降順次開始へ。4月19日から開催の「ヘルスケアIT2017」にも出展。(ドコモ・ヘルスケア
  • 静岡県藤枝市とソフトバンク、市内広域に構築するLPWAネットワークを活用したIoTサービス向けインフラの実証実験を実施へ。17年8月から3年間を予定。藤枝市は10日より実証実験の事業者募集を開始。(ソフトバンク
  • 神戸市、神戸大学、NTTドコモ、ハタプロ、LoRaWANを用いた見守りサービスの共同検証実験を実施。見守りサービスの品質向上の可能性を検証。市内3ヶ所にLPWA基地局装置を設置。(NTTドコモ
  • ケイ・オプティコムとNEC、NFVと10G-EPONを組み合わせた実証実験を3月に実施し10Gbpsインターネット接続回線にvCPE(宅内通信機器仮想化)を適用できることを世界で初めて確認。(ケイ・オプティコム
4/13(Thu)
  • NTTドコモ、ゼンリン、ゼンリンデータコム、AIを活用した自動車向け音声エージェント「AIインフォテイメントサービス」の提供を開始。カーナビ操作の音声対応、行動パターン解析を通じ"自分だけのカーナビ"への成長などを実現。法人顧客に対しNTTドコモが販売。(NTTドコモ
  • KDDIとシスコシステムズ、ビデオ会議を中心にビジネスコミュニケーションを統合したクラウドサービス「Cisco Spark」の提供について協業。固定電話回線やPBXなしで固定電話番号による音声環境を実現。(KDDI
  • UQコミュニケーションズ、WiMAX 2+の新料金プランを6月1日より提供開始へ。契約期間を3年間にする一方、通常月1005円かかるau 4G LTE利用時のオプション料金が無料に。(UQコミュニケーションズ
  • NTTコミュニケーションズ、Software Defined(SD)技術を用いた企業向けIoT通信の管理運用機能拡充を6月より開始へ。「Arcstar Universal Oneモバイル」「OCN モバイル ONE for Business」向けに提供。(NTTコミュニケーションズ
4/14(Fri)
  • NTTドコモとローソンが「防災及び災害対処活動に関する相互協力協定」を締結。17年9月までにローソン本社および全国の支店等140か所にドコモの「災害対応充電器(マルチチャージャ)」を配備。災害時、被災地での復旧作業に従事するドコモグループ社員等へローソンが物資を支援、など。(NTTドコモ
  • NTTコミュニケーションズ、青森県弘前市との間で「ひろさき地方創生パートナー企業協定」を締結。17年5月から、NTTコムの教育クラウドプラットフォームサービス「まなびポケット」とタブレット端末を、弘前市内のICT教育先行研究モデル校(小学校3校)に提供。将来的には全校へ展開。(NTTコミュニケーションズ
週刊モバイルビジネス通信