IIJmio meeting 15:

「SIMロック解除してもMVNOが使えないケース」「IIJがフルMVNOを目指す理由」を解説

4月15日、インターネットイニシアティブ(IIJ)はMVNO「IIJmio」のトークイベント「IIJmio meeting 15」を開催した。今回のテーマは「SIMロック解除」「フルMVNO」「今後の総務省の取組」の3つで、総務省の取組については既に別記事にて取り上げた通りだ。

そこで本記事では、残る2つのテーマについて、登壇したIIJ堂前氏、佐々木氏の講演内容をお伝えしたい。

【「IIJmio meeting 15」関連記事】
「SIMロックを解除したスマホでMVNOを利用」時の注意点
解除しても使えないケースを具体例をあげて解説
IIJ 堂前 清隆氏

IIJ堂前氏のテーマは「SIMロックを解除してau,SoftBankのスマホを使うとどうなるのか」。

SIMロック解除に関する報道が増えたことで「SIMロックを解除したら今使っているスマホがIIJmioでも使えるのか」相談を受けるケースが増加傾向にあるという。そこで状況を整理すべく今回のテーマが選ばれたようだ。

iPhoneとAndroidスマホで状況は大きく異なるという。まずiPhoneの場合だが、iPhone 6以降は3キャリアが販売する端末は全て同一モデルとなっており、利用できる電波の種類も同じだという。そのため、SIMロックを解除すれば問題なく利用できる(ドコモ網採用の「IIJmio タイプD」でNTTドコモのiPhoneを使う場合はSIMロック解除不要)。ただし、iPhone 6はSIMロック解除ができないため、実質的にはiPhone 6s以降が該当する。

キャリア端末をMVNOで使う際の注意点
国内販売iPhoneは全て同じモデル(型番)
キャリアが販売するiPhoneのIIJmio対応表
iPhone 6まではSIMロック解除の対象外
出典:てくろぐ「IIJmio meeting 15資料公開」より

Androidスマホの場合、モデル名や外見が同じであっても、携帯キャリアごとに「端末の中身が違う」ケースがあるという。会場では3キャリアが揃って取り扱った「Galaxy S6 edge」を例に"中身"の対応周波数帯が異なることが説明された。各キャリアとも自社の周波数帯にマッチさせた端末になっているため、他社が重用する周波数帯であっても非対応の場合があるため注意が必要だという。その他の注意点として、端末が「VoLTE対応」と謳っていても3キャリア全てのVoLTEに対応している訳ではない点、テザリングが使えない場合がある点などが挙げられた。

キャリアが販売するAndroid端末のIIJmio対応表
キャリア端末はモデル名が同じでも対応電波が異なる
au端末で「IIJmio タイプA」を使う場合SIMロック解除が必須
キャリア端末をIIJmioで使う場合のまとめ
出典:てくろぐ「IIJmio meeting 15資料公開」より
IIJがフルMVNOを目指す理由
IIJ 佐々木 太志氏

IIJ佐々木氏のテーマは「IIJの考えるフルMVNOとは」。

冒頭で佐々木氏は、フルMVNO化でものすごいことが実現できる訳ではないと端的に語った。あくまでMNOとMVNOの役割分担の境界線を少し動かすだけの話のため、登壇して何を伝えればいいのか非常に悩んだそうだ。

その上で、IIJがフルMVNOを目指した理由として「横並び化の進展」と「IoT時代に必要なSIM」の2点を挙げた。

◇MVNOの契約テンプレート「卸標準プラン」の功罪
◇参入は容易になるも、他社との差別化が困難に

1つ目の「横並び化」は、MVNOの振興策とも関連している。2002年、MNOとMVNOの関係やMVNOの事業展開に関する、電気通信事業法及び電波法の適用関係を明確化する目的で「MVNO事業化ガイドライン」が策定された。ガイドラインは定期的に改定が行われているが、2008年5月の改定で盛り込まれたのが「卸標準プラン」の考え方だ。これは、卸電気通信役務において料金や提供条件で標準的なケースを想定した「契約におけるテンプレート」(佐々木氏)で、MNOはが策定することが望ましいとされた。

これにより、卸標準プランどおりならMVNOが比較的スムーズにMNOから回線を借りることができるようになった。しかし、卸標準プランが提供条件のデファクトとなったことでMVNOの通信サービスは横並び化が進んでいる。通信サービスで差別化ができないため、量販店の陣取りやキャッシュバック、テレビCMなど「通信サービスと関係ないところに競争軸が移っている」(佐々木氏)状況を招いている。

現在の枠組みでは、MVNOが自ら保有する設備はインターネットへのゲートウェイ部分のみに限られ、ネットワーク全体からみればごく一部に限られる。フルMVNOで、サービス競争の前提となる設備競争がしやすくなる点が1つめの理由といえる。

契約テンプレート「卸標準プラン」とは
卸標準プランで提供条件がデファクト化し横並び進む
出典:てくろぐ「IIJmio meeting 15資料公開」より
◇「会話できるぬいぐるみ」をベースに
◇IoT時代に求められる通信機能と課題を列挙

横並びに苦悩するのはMVNOだけでなく、スマートフォンがコモディティ化するなかでMNOも端末や料金プランが横並びになっていると佐々木氏は指摘する。スマホの次を探す取り組みの中で期待がかかるのがIoTだが、MVNOが現状の延長線上でIoTもMNOのインフラに依存すれば、横並び化は避けられないと考えられる。IIJがフルMVNOを目指す2つめの理由はここにある。

佐々木氏は「会話できるぬいぐるみ」を例に、IoTにおける具体的な課題を列挙した。

スピーカーとマイクが入り、ネットワーク上で文脈解析処理を行い自然な会話を実現するぬいぐるみを想定すると、まずはどのように接続するかが課題になるという。Wi-Fiの場合、そもそも家庭にWi-Fi環境があるのか、また接続に必要なSSID等の情報をどう入力させるのかなど障壁は大きい。

他方、モバイルデータ通信では、料金はどう請求するのか、SIMカードは挿したままにするのか、開通手続はどうするのか、不要になった際に転売されたらどうなるのか、など、こちらも多くの課題が考えられるという。IoTでは、接続までの工程を容易にし、料金設計でも自由度がないと課題が解決できず、サービスが作りにくい。

フルMVNOになればSIMを自前で発行できるため、MVNO側がSIMの開通や廃止をコントロールでき、これら課題が解消できると佐々木氏は述べた。

フルMVNOはIoT製品設計の自由度が高くなり、ハードルも大きく下がると期待感を示した。ただ現状はデータ通信の部分のみに限られており、音声の部分もフルMVNOに踏み込むのかどうかは難しいところだという。そのため、スマホがフルMVNOでどう便利になるかも現時点では明確にしにくいと説明がなされた。

このままではIoTも横並びのおそれ
「会話できるぬいぐるみ」実現への課題
IIJがSIMを自前で発行する理由
フルMVNO さらなる課題
出典:てくろぐ「IIJmio meeting 15資料公開」より

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IIJ主催イベント『IIJmio meeting』取材記事