5Gトライアル施設の現状を聞く(1) ソフトバンク編:

ソフトバンク「5G×IoT Studio」お台場ラボ、共創に向けた取り組みの場と位置付け

4月10日、総務省は通信キャリア各社に5G向けの電波割当を行い、いよいよ国内展開の号砲が鳴らされた。本誌でも5Gを活用した様々な実証実験がレポートされているが、その中でも各社が力を入れているのが「パートナーの拡大」だ。

様々な産業分野で5Gを活用してもらうべく、トライアル施設を開設し検証の場を提供している。そこで今回から、キャリア各社のこれまでの取り組みならびに今後の展望について取り上げていきたい。

初回は、ソフトバンク株式会社 先端技術開発本部 先端技術試験課 課長 山田 大輔氏ならびに、担当課長 須田 哲生氏に、同社の施設「5G×IoT Studio」お台場ラボの状況についてお話を伺った。(取材は3月下旬に実施)

先端技術開発本部 山田 大輔氏(左)、須田 哲生氏(右)
デモ体験・検証だけでなく「共創」に向けた取り組みの場と位置付け
――18年5月に「5G×IoT Studio」お台場ラボ(以下、お台場ラボ)を開設され、11月にはリニューアルもされているかと思います。まずはお台場ラボの中身について教えて下さい。
山田氏:
お台場ラボでは、28GHz帯のNSA(Non Stand-Alone)構成による5Gネットワーク環境を構築していて、5Gの技術・サービス両面での検証が実施できるようになっています。

また、業種別に5Gのユースケースを想定したデバイスを設置して実際に体感いただけます。一例を挙げると、製造業向けにはロボットアームを用いた遠隔操作のデモを用意しています。そのほか建設業、エンターテインメント業、放送業、小売業など、さまざまな業種向けにデモを置いています。

――業種問わず幅広くデモを設置されているようですが、これまでお台場ラボを利用されている企業に、業種の偏りなどはあるのでしょうか。
山田氏:
我々も当初は特定の業種に偏るのではないかと想定していたのですが、実際はそんなことはなく満遍なくご利用いただいています。強いて挙げるとすると、サービス業や製造業の方が若干多いかな、といったレベルです。

業種に関係なく、様々な企業が今後の5GやIoTの普及を見据えて動き始めていることの裏返しではないかと感じています。

――ラボを訪れた企業の方々は、具体的にどういったことをされるのでしょうか。
山田氏:
訪問いただいたお客さまには、まずは各デモをご覧いただきます。ただし、我々はお台場ラボを単なるショーケースとは考えておらず、一通りデモを体験いただいたあとは、5GやIoTでどのような新たなサービスを生み出せるか、お客さまとディスカッションを行います。その場で、具体的に次のステップをどうしていくかまで決めていきます。
――そこまで対応される狙いは何でしょうか。
山田氏:
企業の方々と新たな価値を「共創」していきたいと考えています。

両者で付加価値の高いサービスを1つでも多く生み出せるよう、1社1社の方々にしっかりと5GやIoTの可能性をご理解いただき、活発に議論できる環境を作っています。

ここまでの対応を行うにはある程度の時間が必要となりますので、お台場ラボへの訪問は1日2社に限定しています。

――枠を絞り込んでしまうと、参加社数が限られてしまいませんか。
須田氏:
やみくもに社数を増やすのではなく、共創の取り組みで新しいサービスをしっかり作り上げていくことが大事だと考えています。
ラボにはMECサーバを設置、低遅延を活かした5GとAIの掛け合わせに期待
――お台場ラボで展示されているデモは、5Gが商用化された際にサービスインする候補となりますね。
山田氏:
もちろんデモ環境にあるソリューションが実際にサービス化できたらいいな、とは思っていますが、具体的に決め打ちしている訳ではありません。

須田氏:
デモ内の遠隔操作などは産業界の方々にとって注目の的になるでしょうが、コンシューマの方に幅広く興味を持っていただけるかというと、そうではないと思います。

それよりは、5Gの高速大容量を活用した映像系サービスのような体験できるものが、早期に出てくるのではないでしょうか。

――ほかに今後期待されているアプリケーションはありますか。
山田氏:
そうですね、1つは5GとAIの掛け合わせに注力しています。

高画質映像をAIで解析すればすぐに次のアクションが起こせると思います。動画に映り込んだ個人の顔にリアルタイムにモザイクをかけて個人情報を保護したり、高速道路上に設置した監視カメラ映像から落下物を検出したり、といった具合に、様々なソリューションが想定されます。

このような利用シーンでは瞬時の処理が要求されますので、AIをインターネット上のクラウドに置いたのではレスポンスに時間がかかってしまいます。そこでコアネットワーク内にクラウドを設置しインタラクティブに動かす枠組みが5Gの1つのカギになってくると思っています。

――MEC(Multi-access Edge Computing)の活用ですね。
山田氏:
ええ。お台場ラボにもMECサーバ環境を設置し、コンテナとハイパーバイザーの仮想環境を提供することで、お客さまがアプリ等を載せてトライアルできるようにしています。様々なニーズに応えるため、インテル、Arm、NVIDIAなどのサーバを用意しています。

CADやクラウドゲーミングなど処理に過大な負荷がかかるサービスも、MEC側のコンピューティングリソースで処理を肩代わりできますから、ユーザーの端末スペックに操作性が縛られることも少なくなると思います。

5Gの導入当初は、構成要素のうち高速大容量を活用したサービスがどうしても先行していきます。とはいえ「ネットワークの土管が広くなったね」で終わるのではなく、低遅延・多接続も活かしたサービスが出てくるとさらに高度化するのではないでしょうか。

――本日はありがとうございました。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて4月26日に公開された記事となります。
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