5Gトライアル施設の現状を聞く(3):NTTドコモ編:

5G時代のソリューション創出拠点「ドコモ5Gオープンラボ」、沖縄やグアムにも設置した狙いは

様々な産業分野を巻き込むべく、通信キャリア各社が開設している5Gトライアル施設。その現状と今後について取り上げる連載企画の3回目は、株式会社NTTドコモ 法人ビジネス本部 ソリューションサービス部の担当者に、常設検証施設「ドコモ5Gオープンラボ」の状況についてお話を伺った。(取材は3月末に実施)。

「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」参加企業向けの5G検証施設と位置付け
――まずは「ドコモ5Gオープンラボ」(以下、5Gラボ)の位置付けについてお聞かせ下さい。
ソリューション企画・商品企画担当課長 中田大輔氏。5Gラボの企画・運営を手掛ける。
中田氏:
弊社では、2020年を予定している5G商用化に向けて、幅広いパートナーと新たな利用シーンを生み出すため「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」を昨年2月に立ち上げました。

5Gラボは、このプログラムに参画されている2300社超(※2019年3月末時点)の企業・団体に対して5Gの技術検証環境を提供する施設と位置付けています。あわせて、このプログラムでは5Gに関する情報提供や参画企業間のマッチングも行っています。

――5Gラボは、プログラムに参加されている方々向けの施設なのですね。
中田氏:
おっしゃる通りです。5Gラボには5Gの基地局と移動局を設置していますので、プログラム参加者が機器を持ち込んで接続試験を行うことができます。また、我々の方で4K映像機器やVRカメラといった5Gに親和性の高い周辺機器を配備していますので、それら機器を用いたデモを体感いただくことも可能です。
――5Gラボを利用される企業は、やはり5Gの利用シーンのイメージを具体的に抱いている方が多いのでしょうか。
フロントSE・第三担当課長 織田敦氏。5Gラボ利用企業による検証の支援を手掛ける。
織田氏:
一概にそうとは言えず、本当にさまざまな段階の方が参加されています。

5G活用のイメージを思い描いている企業もあれば、まずは体験してみようという方々もいらっしゃいます。また、既にLTEで提供しているサービスを5Gでブラッシュアップしようと検証に訪れるケースもあります。

検証用に持ち込まれる機器も多岐に渡っていて、スマートグラスのような完成品に近いものもあれば、手作りの模型で実験をされる方もいます。

おおまかな傾向としては、既に何らかの技術をお持ちで、その技術が5Gで動作するのか確認したい方が多いと思います。

想定上回る利用で拠点数を拡大、沖縄やグアムにも設置した狙いは
――5Gラボ開設後の反応はいかがでしょうか。
中田氏:
おかげさまで、利用者は想定を大きく上回っています。正直申し上げて5Gラボにショールームのような派手さはないのですが、実際に5Gに触れられる環境があり、機材も一通り揃っている点が評価されているのではないでしょうか。

実際、当初は5Gラボ内を見学される方が多かったのですが、今は検証のためにお越しいただくケースの方が多い状況です。予約が取りにくいほどの活況のため、東京拠点では検証ルームを1部屋から3部屋に増やして対応するほどです。

――5Gラボを次々と新設しているのも、多くの反響があったからなのですね。
中田氏:
はい。昨年4月の東京・四ッ谷拠点を皮切りに、9月に大阪、1月に沖縄、そして今年3月にはグアムにも拠点を設置しました。基本的にはどの拠点でも同様の実験ができるようにしつつ、配備する機器には少し地域色も取り入れています。
――東京、大阪に次いで、沖縄とグアムを設置場所に選んだ狙いはどのあたりにありますか。
中田氏:
沖縄については、昨年7月に「沖縄振興推進重点取り組み6分野」を策定するなど、全社的な取り組みを進めており、その方針に沿って設置しました。

東京と大阪を都市型ラボとすれば、地域型ラボの第1弾が沖縄と言えるかもしれません。沖縄ラボで地域創生や産業振興のモデルを作り上げ、全国展開していきたいと考えています。

海外にラボを設けたのは、グローバル展開を目指す日本国内の企業と、その逆に日本でのサービス展開を検討する海外企業、その両方を相互にサポートできる環境を構築するためです。

9月の5Gプレサービスにあわせ、フィールドでのトライアルが可能なクラウド基盤を準備
――5Gラボの今後の展開について教えてください。
ソリューション・デザイン・第一担当課長 岡田剛氏。クラウド環境の構築やクラウド上のソリューションに関する検証を手掛ける。
岡田氏:
社内では5G商用化後を「5G時代」と呼んでいますが、5G時代に向けて様々なソリューションをご用意し、お客さまに活用していただけるようにするのが現在のミッションだと考えています。既に、5Gラボを含む様々な取り組みを通じ、5G時代に期待されるソリューションが数多く生まれています。

サービス創出のための実験・検証の場としての利用から、実際に5Gを利用する側のパートナー企業が5G及びサービスの導入に向けた体験を行う場所を提供したいと考えています。

そのための仕掛けの1つとして、今年9月を予定している5Gプレサービスの開始にあわせて「ドコモオープンイノベーションクラウド」(OIC)を提供する計画です。

――クラウドというと、MEC(Multi-access Edge Computing)のようなイメージでしょうか。
「ドコモオープンイノベーションクラウド」提供イメージ
岡田氏:
はい。ドコモ網内にクラウドを設置することで、インターネットを介さず、セキュリティの担保や低遅延を確保するのは、まさしくMECの特徴といえます。

OICでは、コアネットワークと接続させたクラウド基盤上に、AIエージェントや画像認識のようなソリューションを載せ、新たなソリューションを創出していきたいと考えています。

OICの前身ともいえる「ドコモ5Gオープンクラウド」は昨年7月からスタートさせていますが、これは接続先が5Gラボとなっており、クラウドにサービスを載せるための検証に主眼が置かれていました。

今年9月の5Gプレサービスの段階では、エリアは限られるものの、フィールド上に5Gエリアが登場することになります。そこでOICでは、接続先を商用コアネットワークへと広げます。5Gエリアでトライアルできる環境を整えることで、できるだけ多くのユーザーに5G時代のソリューションを体感していただきたいと思います。

――本日はありがとうございました。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて5月17日に公開された記事となります。
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