KDDIが2014年度決算を発表:

KDDI田中社長、決算発表の場で「予想よりMVNOが増えている」と警戒感示す

KDDIが5月12日に発表した2014年度の連結決算によると、営業収益は前年比5.5%増の4兆5731億4200万円、営業利益は前年比11.8%増の7412億9900万円だった。

都内で行われた決算発表会では、登壇した代表取締役社長 田中孝司氏による説明が行われた。発表会およびその後の囲み取材における、記者との主なやりとりは以下の通り。

業績面に関する質疑応答
――2016年度の営業収益は通期予想で4兆4000億円となっているが、2015年度と比べてマイナスとなった理由は。
KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏
田中氏:
2016年度よりIFRS基準を適用することが原因。従来の日本基準では売上と費用で両建てできたものが、計上できなくなることがあり、マイナスになっている。主に端末別コミッション、キャッシュバック等が計上できなくなる。


※編集部注:
監査前の参考値ではあるが、2015年度のIFRS基準における営業収益は4兆2662億9600万と公表されている。つまり、実質的には通期予想はプラスを見込んでいることになる。

業績一覧
――NTTドコモの営業利益を抜いたが。
田中氏:
3年間のコミットメントを達成することが主眼にあり、その1つの通過点としてNTTドコモさんを抜いたというだけ。期待される回答にはなっていないと思うが、なんともコメントのしようがない。
――設備投資はUQ分を除けば今年度は前期比減少を予測されている。設備投資が落ち着く中で、他社へのM&Aなどを進めていくのか。
設備投資
田中氏:
派手に申し上げるのが不得意で、また会社の性格としても一歩一歩進めていくタイプと考えており、現時点で何か申し上げることはできない。

3M戦略が道半ばなので、戦略にあう会社であれば出資を進めていきたいと思ってはいる。

設備投資はLTEのカバー率が99%まできているので、モバイル向け投資はキャパシティアップ、高速化にシフトしており、減少を見込んでいる。

キャッシュの使い方は大きくM&A、設備投資、配当が挙げられるが、配当については増配を継続して進めている。

――MNPでの転入が好調で、解約率も低下しているが、成功の要因は。
MNP純増
au解約率
田中氏:
固定と携帯のセットであるスマートバリューが一番寄与している。パートナーさんの販売もあってCATVからの加入も増えている。解約率も同様。

3月にNTT東西が光回線の卸サービスをはじめたが、春商戦ではほとんど影響がなかった。ただし、今後どうなるか分からない。今後のポイントとして、もう1つはMVNOで、それに打ち勝てるようなサービスの提供に努めていきたい。

――MNPの市況はどうなっているのか。
田中氏:
MNPに関しては、現場の足下ではソフトバンクさんが一番なのではないか。NTTドコモさんはスマートメーターなどが入っているので数字が増えているのではないか。
――携帯電話の契約数では3位となるが。
田中氏:
弊社にはUQコミュニケーションズがあるが、別会社なので契約数が合算できないというのがある。そういう見かけの数字にはこだわらない。
――2014年度は、NTTドコモが通年でiPhoneを取り扱った初の年となるが、その影響は。
田中氏:
同質化が進んだ。端末はどこも同じで、料金、通信品質も似たり寄ったり。スマートバリューも似たようなのが出てきて、一言で言えば「大変」。
SIMロック解除やMVNOのインパクトに関する質疑応答
――SIMロック解除に対する影響は。
田中氏:
まだはじまっていないのでなんとも言いがたいのが本音。解除で先行しているNTTドコモさんの動向を見ていると、業績面での影響は少ないのではないか。
――2014年度、KDDIがMVNO事業者に貸し出す際の帯域接続料が大幅に引き下げられたのはなぜか。
田中氏:
接続料は総務省が定めた計算の方程式があって、我々はそれに数字を入れて計算しているだけ。他社さんの接続料が安いのは、加入者数が多いからではないか。我々が接続料を引き下げたのはトラフィックが増えたから。
――帯域接続料の引き下げが与える影響は。
田中氏:
正直言って先行き不透明というのが本音。市場のなかで、予想よりMVNOは増えていると思うし、興味を持つお客さまが増えることでますます拡大していくとみている。

我々のお客さまが流出することもあるだろうし、逆にauネットワークを使っているKDDIバリューイネイブラーに戻ってくることもあるだろう。あんまり増えない方がいいなぁ、とは思う。

――SIMロック解除やSIMフリー端末は、MNPの開始時と比べてインパクトはどの程度か。
田中氏:
SIMロック解除やSIMフリーは長期的な観点で影響が出るもの。現状、CDMAネットワークに対応する端末も少ないため。それよりはMVNOの方が業績に与える影響が大きい。お客さまがいったんMVNOに行ってしまえばもう戻ってこない、片方向の流れになってしまうので。

SIMフリーに関しては、まず中古市場が広がるのではないか。そうすると最初に端末メーカーさんに影響が出てくるだろう。「端末を頻繁に買い替えなくてもよい」となっていくと総販が減るのでよくないなぁと感じる。

製品・サービスに関する質疑応答
――「au wallet」の現状について伺いたい。
付加価値ARPA収入の拡大
付加価値経済圏の拡大
付加価値経済圏
 
田中氏:
現在、1200万会員を超えたところ。開始当初は「何でやるの」と疑問視されたが、他社が追従したことを思うとそれなりに認知が高まったと思っている。

会員数は道半ば。流通額を大きくしたあとにようやくauウォレットの果実が収穫できると思う。経済圏は大きいところに集まる傾向にあるので、もっと大きくしていきたい。既存の他のサービスと比べまだまだだと思う。

――スマートバリューの適用率が(auスマホ契約者全体の)半数に達したが、今後の方針は。
auスマートバリュー浸透率
CATVによるau販売拡大
田中氏:
まだ浸透率を伸ばしていきたいと考えている。モバイルと固定は全然プラクティスが違って開始当初は大変だったが、3年経って慣れてきた。他社も「固定と通信のセット」を開始しているので、セットが世間の常識になっていくと思う。なのでまだまだ伸ばせる。
――auひかり契約者に占めるスマートバリュー利用者の割合は60%とのことだが、低くないか。
田中氏:
そうですか?新たに加入される人は適用率がもっと高いが、スマートバリュー開始前からのお客さまもいらっしゃるので、累積でみると徐々に上昇となっている。
――端末購入から180日経過しないとSIMロック解除ができない、と制限をかけた背景は。
田中氏:
総務省のガイドラインにあわせて条件をつけた。当社にとっては(通信方式が他社と異なるため)SIMロックをはずしても使い道がなく今まで実施していなかった。新しく開始する、ということだったのでガイドラインに則った。

国内の他社サービスをどこまでサポートできるかは、ある程度の範囲でしか確認できないし保証はできない。対応しているバンド(周波数帯)は書けるが、他社のメールサービスに対応しているかどうかとか、そういうところまでは難しい。

6ヶ月の制限はグローバルで見れば普通だと思う。そろりそろりとやっていきたい。

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