携帯3社の決算比較から透ける各社の事情(2):

SB、『数』から決別し新たな姿を模索

前回のKDDIに続き第二回目として取り上げるのが、ソフトバンクである。

同社の2014年決算は、営業収益が8兆6702億円(同30.1%増)、営業利益が9827億円(同8.8%減)の増収減益だったが、主力のソフトバンクモバイル(SBM)の売上高でも前年度より1977億円増の2兆5257億円、セグメント利益は同501億円増の559億円と増収増益を記録した。

成長し続けることを最大のミッションとして掲げるソフトバンクにとって、ある意味当然の結果であるというかも知れない。しかし、2006年のボーダフォン買収時に10年後に今のようなポジションを獲得できると思っていた人は、私も含めてほとんどいないだろう。

改めて思い出されるのは、買収時にソフトバンクの設備機器を納入している担当者が社内で実際ソフトバンクがどのくらいのシェアを獲得できるのかというフォーキャストMTGをした。その担当は、かなり強めで毎年0.5%の累積シェア加算のシミュレーション表をベースとして予算を提出したところ、参加メンバーから強気すぎるとして却下されたという話だ。

これからソフトバンクから予算を取りに行く立場の人達でも予測できなかったのだから、言わずもがなである。

さて、今回の決算発表では、ソフトバンクグループの再編についても述べられたが、例年以上に国内の携帯電話事業に関する内容が薄かったように感じられた。

グローバルなインターネット事業を強化するため、後継者候補の紹介などに光を当てる一方で、国内の携帯事業から目をそらすような演出もあったのではと勘ぐってしまった。実際、国内の携帯事業においては、純増数は第三位の184万と昨年度と比較すると約160万も減少し、解約率も昨年度と比較し0.05%プラスの1.33%(他社は0.6%前後)まで上昇している。

実は、ソフトバンクは2014年度Q4より他社のフィーチャーフォンからソフトバンクにMNPすると、フィーチャーフォンの通話し放題のプランが1,480円で利用できるキャンペーンを展開している。地域や案件数(法人)によっては、その半額もしくは更にというケースもある。つまり、ソフトバンクはそうした施策を強化することで純増数を拡大させることを試みたが、結果は大きな成果には結びつかなった。常に数を追い続けることで、組織を鼓舞し成長してきた常勝軍団にとって、2014年度は我々が想像する以上に大きなエポックメイキングとなったのではないだろうかと考える。

2015年度から国内の携帯事業の指揮を取る宮内社長は、「本質的にはガラケーは必要ない」「一括0円、やった僕らがバカなんですよ」と、それまでの業界や自社の取組を否定するような言動で注目を集めた。

これまでのやみくもに数を積み上げるのではなく、スマホという良質な顧客を獲得するための施策を強化していくということだろうが、これは孫社長の頃とは全く異なる取組をこれから始めるというように聞こえる。具体的には、これまで最も重視していた「数」というKPI(重要業績評価指標)からの決別もしくは変更である。

国内市場ではMVNOの台頭が著しく、他社から顧客1人を獲得するコストは上昇し、これまでのようにやみくもに純増数を増やす施策に手厚くお金をかけていても、期待した利益を確保することが難しくなっていることは間違いない。

しかし、その一方で組織を強固にしてきた基盤(KPI)が否定されることで、関わる人たちはこれから何を支えに動けばいいのだろうかと思うかも知れない。

ソフトバンクにとっての次の「青い鳥」は何になるのか。それとも変わらないままなのか。注視していきたい。

特集:携帯3社の決算比較から透ける各社の事情
  1. KDDI、収益拡大の裏に垣間見える法人事業の不振
  2. SB、『数』から決別し新たな姿を模索
2014年度 各社決算発表