通信キャリア3社の決算が5月11日までに出揃った。そこで今回は、各社の最新の通信契約純増数の動向を整理してみたい。
2016年度第4四半期(2017年1~3月期)における各社の契約数増減は、NTTドコモが129.2万増、KDDIが71.1万増、ソフトバンクが18.2万減となった。
2016年度通期の純増数は391.6万。前年度(436.9万)並みの純増数を確保したと言えるだろう。ただし、通信モジュールを差し引いた数字で比較すると、前年度と比べ111.5万少ない262.0万増にとどまっている。
純増数にはNTTドコモ回線を使うMVNOの増加分も入っているため、ある種かさ上げされた状態と言えるが、決算発表の場で取締役常務執行役員 財務部長 佐藤啓孝氏は「MVNO除く契約数はプラスをしっかり維持」と述べている。
2016年度通期の純増数は262.0万で、前年度(243.2万)を上回る数字を叩き出した。しかし、個人向けau回線数を示す「パーソナルセグメント」のau契約数は55.4万増にとどまった。2014年度は235.1万増、2015年度は175.4万増となっており、増加ペースに急ブレーキがかかっている状況が鮮明だ。
代表取締役社長 田中孝司氏は現在の市場環境を「MNO間の競争はほとんど流動が出ていない。MVNOに向けての流出が顕著になっている」と話し、単純な契約数ではなく、au契約者数と連結子会社のMVNO契約数を合計した「モバイルID数」を重視する姿勢を示した。
2016年度通期は93.9万減で、前年度(128.1万減)より減少幅は縮んでいる。同社は純減幅の大きいPHSや通信モジュールを除外した「主要回線」数も公表しており、その契約数は36.2万増だった。2014年度は76.2万増、2015年度は48.8万増となっており、年を追う毎に増加の勢いが落ちている。
また、1~3月期の解約率は1.53%だった。ここのところ、四半期ベースで前年同期を下回る数字が出る傾向にあったが、1~3月期は前年同期を上回る水準となった。
なお、解約率は3社の数値を単純比較できない事情がある点を指摘したい。
KDDIが公表する解約率は「パーソナルセグメントにおけるスマートフォンとフィーチャーフォン(プリペイドを含む)」がベースとなっている。一方、ソフトバンクの解約率にはタブレットやモバイルデータ通信端末が含まれている。
そこで、ソフトバンクが別途開示している、スマートフォンおよび従来型携帯電話に限定した「携帯電話解約率」を見てみると、1~3月期は1.04%だった。KDDIの1~3月期の解約率は1.07%なので、2社の解約率はほぼ同レベルとも言える。
しかし話はここで終わらない。ソフトバンクは、MNPでソフトバンクとY!mobileのあいだで乗り換えが行われた場合は解約数とはカウントせずに解約率を計算している。他方、KDDIはUQ mobileへのMNPを解約数に含めている。両社とも、他社への流出を堰き止めるためサブブランドを重用しているが、その動向が解約率に影響を与えるか否かで2社の対応がわかれている。
通信キャリア3社間の競争から、MVNOやサブブランドも入り乱れた戦いに市場がシフトしたことで、各社が公表する数字が何を表しているのか、従前以上に注意する必要が出てきたと言えるだろう。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて5月12日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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